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ITAKURA’s EYE 「世界のダウンサイドリスク」

2009年第四・四半期(10~12月期)のGDPが、実質1.1%増であると内閣府より速報値として発表されました。
輸出と個人消費が伸び、また、設備投資も増加に転じたとの事です。

この数値を見て楽観する市場関係者はほとんど居ないと思います。
敢えてネガティブに評価すれば・・・

1、輸出の伸びは、明らかに中国・米国のバラマキ効果に依存するところですし、
2、個人消費の伸びもまた、エコ政策などのバラマキ効果に依存するところです。
つまり、自律回復には程遠いといわざるを得ません。
3、また、設備投資については、(個別企業の財務データを見れば明らかなことですが)減価償却費の範囲内での設備投資であって、リーマンショック以降、経営者の先行きに対する不安・・・つまり需給ギャップにより抑えてきた設備の改新に過ぎず、企業の成長戦略に基づいた設備投資増ではないことがわかります。

メディアからは、「景気の二番底の可能性が薄らいだ」との評価がされていますが・・・

1、個人消費を支えたのは耐久消費財(耐用年数5年~10年程のモノ)に対するバラマキ政策の結果であることから、需要の先取りに過ぎない可能性が高く、そうであれば、バラマキが息切れするとき、再び消費が悪化する可能性を否定できません。

2、また輸出については、中国の金融引締めや近い将来の元切り上げ、米国の失業率の高さと不動産市況の悪さなどから、先行き失速する可能性があるばかりか、世界的なバラマキによる各国の財政悪化懸念~金利上昇~経済失速へ向かう可能性も否定できない状況です。

各国の財政悪化は、PIGSで顕在化しましたが、それ以外の国でもかなり深刻です。

日本においては、ようやく消費税率引き上げを含む税制改革の議論が始まりそうですが、この問題、そんなに時間的余裕は無いのではないかと、僕は思います。

数字だけ見れば、極めて深刻な財政状況ですが、金利はさほど大きく変化していません。
その理由を挙げれば・・・

1、そもそもJGBは国内によって消化されている(=JGBの90%以上が日本人による保有であり、且つ、円建て≒為替変動リスクが直接は無い)
2、国内の純金融資産が1000兆円超( > JGB残高)、であることから、現在の起債ペースでも後数年の余裕がある。
3、消費税率が先進諸外国と比べ「極端に」低いので、引き上げ余地がある。
4、「国債村」が何とか消化するだろう・・・つまり、実質的な日銀によるJGB買い(=中央銀行による政府へのファイナンス)

などといったことが原因かと思われますが、これらの楽観要因のうち、一つでも崩れてしまえば、たちまち国債暴落~金利上昇~持ち直しているように見える経済の失速、となる可能性を否定できません。

たとえば、国民の純金融資産のうち、お金持ち分は、キャピタルフライトの可能性が高いことに加え、貯蓄の多い高齢者の預金取り崩しもあり、JGBの引き受け役にならない可能性が考えられますし、政治の「遅さ」から消費税率引き上げに時間がかかることや、国債村の動きに市場が敏感に反応する(←国債ショート)可能性などが考えられます。

 

もしかしたら・・・この3月が峠とされるPIGSの財政悪化による円高が、最後の円高?になる可能性も無いとは言えない、と、あくまで予測でしかありませんが、その可能性が高いと思います。

これまで数年間は、「黙ってYENをもっていれば実質利回りがプラス」だったことから、「次」を探さなければならない可能性が高いと思いますが、そのタイミングは、ユーロ発の世界的なショックに因る一時的な円高のタイミングかもしれません。

 

日本モデルは、これまで長期に渡ってアメリカ依存でしたが、それが中国をはじめとする新興国に徐々にシフトしている「だけ」ですから、相変わらず諸外国の経済状況に翻弄されることに変わりはありません。

今(2010中という範囲)、世界的なショックがあれば、日本の経済状況はかなり厳しい局面を迎えることになりそうです。

 

さて、どうするか? 

予測はあくまで予測に過ぎませんから、今慌ててポートフォリオを組みなおすのは時期尚早ですが、「もし~になったら~する」、といった、情報収集~分析~思考実験を通じた準備をすることに価値があるのは間違いないことだと思います。

 

2010年2月16日 板倉雄一郎

 

PS:

民主党に政権交代しても、基本、何にも変わらないですよね(笑)
そして、代替政権は、政局でも無い限り見当たりません。

PS^2:

先日のNHKスペシャルにて「ランドラッシュ」というテーマがありました。
要するに、長期的な視点に基づく食糧問題の解決のために、各国が争うように外国の農地を買収したり、超長期の借地契約をしたりと、「地面の争奪」が急速に進んでいるということですが、もし本当に食糧危機になるとすれば、(それは気候変動、人口増加などから現実的だと思いますが)、外国の借地では(軍事力でもなければ)どうにもなら無いと思うのですが・・・

だから、実効的な軍事力を持たない日本は、諸外国の経済状況に翻弄される輸出依存モデルから抜け出すことを兼ねて、資源や食糧などの自給率アップという国家戦略を打ち出し、国土の生産できる食糧を増やさなければならないと思うのですが、日本の政治は、大衆迎合しか芸がなく、世間やメディアが騒いで始めて動き出す・・・その傾向は政権交代でなお悪化しているように思います。

国家戦略なき日本は、したがって少子高齢化人口減少となって現れていると思う次第です。

 

PS^3:

また風邪引いてしまいました。
昨年から、月に一度の頻度で風邪引いてます。

で、仕方なく自宅でバンクーバー五輪を観るハメになるわけですが、さすがに五輪ともなると、(それは毎度のことなのですが)・・・

どいつもこいつも、スゲエ!!!

仮にメダルが取れなくても、やっぱり、スゲエ!!!

特に、勝敗に占める道具の割合の高い「金持ち五輪」であるところの冬季五輪の場合、選手もさることながら、道具もスゲエ!!!

でも、霙(みぞれ)交じりの土砂降りの中、必死にスキーを「漕ぐ」バイアスロンを見ていたら、その昔、スキーにはまっていたころの悪天候スキーを思い出し、ブルブル・・・益々風邪の症状が悪化してしまいました(笑)

ところで、男子モーグルは一体なんだ! あれは録画の早送りかぁ!!!

あの頃は、雨だろうが吹雪だろうが、とにかく滑ってたなぁ・・・

なんちゃってモーグルもやってました。
僕の場合は、極スロー再生程度でしたが(笑)

 

PS^4:

バークシャーの格付けが下がりました。
なにやら鉄道への投資で、運河との関係がどうとかこうとか・・・(ネットで調べればすぐに見つかるはずですので詳細は省きます)

バフェット流雪だるま投資は、混沌とする世界経済の状況の中では、暫くの間、使い物にならないかもしれません。

バフェットの生きた場所と時代は、明らかに彼の業績の大きな要因だったのだと思います。





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