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ITAKURA’s EYE 「電気自動車、JAL問題、雇用問題など徒然」

エッセイを暫くお休みしてしまったので、本日は徒然です・・・

 <電気自動車>

電気自動車が世界的に本格的にビジネスになりつつあります。
技術や環境の変化は、すなわちビジネスチャンスになり得ますが、読者の皆さんは電気自動車関連ビジネスへの投資を考える上で、どんなビジネスに興味がありますか?

絶対必要なモーター関連。
やはり注目されているバッテリー関連。
それらに利用されるレアメタルなどの資源関連。
電気自動車を製造しようとする「スモールハンドレッド」のいずれかのベンチャー。

今後、電気自動車関連で成長しそうなビジネス、結構たくさんありますよね。

僕は、以上のいずれでもなく、「急速充電技術」に着目しています。

現在、大容量のバッテリー技術が注目されているのは周知の事実ですが、その目的は言わずもがな「走行距離を伸ばすこと」ですよね。
現在では、150kmの走行が良いところで、先日のNHKスペシャルでは、中国の新興自動車メーカーが300Kmの走行を可能にしたケースが取り上げられていました。
皆さん、走行距離を伸ばすことに必死みたいです。
しかし、走行距離を伸ばすためには、大容量のバッテリーを車に積載しなければならず、そうなると車の重量がかさみ、走行距離が思ったほど伸びない・・・といういたちごっこになってしまいます。
そうなれば、必然としてエネルギー効率は下がってしまいますよね。

けれど、そもそも一度に300Kmも走行する人って、そんなに居ますかね?

ガソリンエンジン自動車の場合、日本の基準では(確か)400Kmを走行できる程度のガソリンを積載できることが定められているわけですが、これってガソリンスタンドというインフラとの関係によって設定された走行距離ですよね。
ガソリン積載量が少なく、走行可能距離が短ければ、ガソリンスタンドをあちこちに作る必要があり、そうでなければ、そこらじゅうで「ガス欠車」が発生して社会問題になりますから。

一方の電気自動車のバッテリーの場合、ガソリンエンジンに比べ、「エネルギー密度(同じ走行可能距離を得るためのエネルギーの重量比)」の低いバッテリーによる電気自動車の場合、ガソリンエンジンと同等の走行可能距離を得ようとすれば、かなりの「重量増」になり、それは結果としてエネルギー効率を大幅に下げてしまうことになります。

そこで、「そもそも1度に300kmも走る人は居ない」ということを前提にすれば・・・

もし! 3分で100km分の走行が可能になるほどの「急速充電技術」があったならどうでしょうか?

高速道路のSAやPA、都心であれば路上駐車帯の脇にあるコイン入れ、コインパーキング、ホテルやモールなどの駐車場・・・これらに「急速充電器」があれば、一度の充電で100kmも走れば十分ですよね。

重たいバッテリーを自動車にたくさん積む必要がなくなれば、エネルギー効率が高まり、電気自動車自体の価格も下げることができる分けですから。

ネットで探してみたら、結構出てきますよね。急速充電技術。

急速充電の技術とインフラ・・・これこそが電気自動車の実用上の要だと、僕は思いますけれど。

参考エッセイ:ITAKURA’s EYE 「これからは自動車」

 

新しい技術や環境の変化は、「大企業の資産を負債化する」というベンチャーの極意が最も効果をもたらすチャンスです。
自動車の部品の中で「エンジン」は最もカネのかかる部位です。
最もカネがかかるということは、それにぶら下がる人間が最も多いということです。
だから、直ちに電気自動車に移行すれば、雇用喪失が加速してしまいます。
したがって、これからは、電気自動車ベンチャーと、既存大メーカーとそのグループの熾烈な綱引きが繰り広げられることでしょう。
もちろん政治も絡まって。

 

<JAL問題とメディアの報道>

JALしか飛んでいない離島などの非採算路線に生活を依存する方々の不安なるものがメディアで報道されることがあります。
JALが飛ばなくなったら大変そう!に見える映像の作り方です。
こんな映像を見ていると、「利益だけじゃない!生活インフラのためにもJALを存続させなければ!」、なんていう錯覚を視聴者に与えてしまうのじゃないかと思うわけです。

おいおい、非採算路線の継続と、「JAL全体の国家による経営支援」を同一に扱っちゃダメジャンかよ!と思いませんか。

非採算路線を生活の上でどうしても継続しなければならないのなら、それこそ、国が「その路線」を買い上げてANAなどに空運委託すればいいだけの話じゃないでしょうか。
そんなコストは、JALの企業年金積み立て不足金額(3000億円強)より遥かに安いですよ。

こんな報道は、JALにカネをぶち込ませたい誰かの思惑に思えてしまうのは僕だけでしょうか。

JAL問題を、交通インフラ問題と考えるなら、「路線単位」で解決策を考えるべきであって、現在のJAL全体の問題にすべきではありません。

また、「競合が居なくなると利用者の負担が増加する」と、(ANAなどに競合するはずの)JALの存続が必要だ!なんていう馬鹿げた理屈を持ち出すマヌケも居たりします。

JALの存在は、JALを競合とする他社にとって、「(JALの価格が高いから)価格を引き下げないための理由」にはなり得ますが、利用者のために価格を引き下げる要因にはなりえません。

そんな理屈を持ち出すのなら、JALを破産させ、債務を切り離した新生JALを作って、アメリカでのサウスウエスト、ヨーロッパでのイージージェットみたいな格安航空会社にするべきですよね。
それならば「競合存在意義」という主張も納得できますけれど。

いずれにしても、こうした様々な利害が入り乱れる企業再生問題となると、でんでおかしな、でも素人は納得してしまいそうな「屁理屈」が飛び出してくるので笑えます。

参考エッセイ:ITAKURA’s EYE 「JANAL」


<雇用問題の解決策が雇用問題を増幅させる>


最低賃金がいくらだとか、
派遣労働を認めないとか、
そんな、「一見」、安定雇用を増やそうとする政策が歩き始めていますが、こんなことしていたら「雇用は無くなる」と思います。

一旦雇用したら首にはできないとなれば、経営者は仮に需要が拡大しても易々と従業員を増やそうとはしなくなります。
どんなに優秀な経営者であっても、需要変動という外部要因を排除することはできませんから、将来の需要の落ち込みを考慮すれば、儲けのチャンスを多少逃してでも雇用を控えるでしょう。
または、工場などを海外に求めることになります。
その結果、日本国内の雇用はドンドン減っていくことになるでしょう。

派遣労働者問題が加熱したときにこんな理屈が派遣労働者から聞こえてきました・・・

「正社員と同じ仕事をしているのに賃金が安いなんておかしい!」

同じ理屈で、経営者はこう主張するでしょう・・・

「東南アジアの労働者と同じ仕事なのに国内の派遣労働者の賃金は高い!」

ってね(笑)

グローバリズムを忘れた国内配分議論では、何も解決できないわけです。

参考エッセイ:ITAKURA’s EYE 「雇用問題」

 

今日は、こんなところで。

2009年11月5日 板倉雄一郎

 

PS:
先週末の久々セミナーは楽しかったです。
2日間の合宿セミナーから新しく1日セミナーへカリキュラムを組みなおした初回でしたが、受講される方々への、「1日に凝縮したから予習ちゃんとしないと理解できないよ!」という脅し(笑)が功を奏したのか、今回の受講生は皆さんしっかり予習してきていただいたようで、かなり凝縮したカリキュラムにも関わらず、受講生チームによるワークショップも滞りなく行われました。
このスタイル、ありですね。

お集まりいただいた受講生、再受講生の方々、本当にありがとうございました。

次回開催は、全く未定ですが、気が向いたらやりますです。はい。

 

PS^2:
で、案の定、セミナー後に僕は風邪をこじらせてしまいました。
もしかして新型!!!?
と思いましたが、熱はせいぜい38度程度でしたし、手元にある抗生物質と総合感冒薬だけで回復してきましたので旧型(笑)です。

これからのシーズン、本当に気をつけないとですね。
パーティーや飲み会などが盛んに行われますからね。

「鼻うがい」、ついついめんどくさくて、みっともなくて、やらなかったりしますが、帰宅後には必ず!





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