長期金利(←市場原理で動く)と、短期金利(←政策的に設定)のスプレッド(開き)が大きくなると、誰が儲かるって、そりゃ銀行です。
短期金利(←預金金利)と、長期金利(長期国債利回り/利率ではありません)が開けば開くほど、
銀行とっての資本調達コスト(=預金金利)と、
投下資本利益率(=リスク回避で国債運用)」のスプレッドが「ほぼリスクフリー」で開くわけです。
エコノミック・プロフィット(またはEVA)=
(投下資本利益率ー資本調達コスト)*投下資本
ですから、
投下資本利益率 > 資本調達コスト
であればあるほど、儲かるわけです。
勿論、国債に「何かあったら」銀行どころか国全体がおかしくなってしまいますが、そうならないかぎり、以上のようになります。
だから「ずるい!」ってわけでもありません。
信用拡大(=経済規模拡大)のためには、金融機関のバランスシートが良い事が「必要条件」ですから。
けれど、必要条件が満たせても、金融機関から見た「投資先(融資先)」が見当たらなければ、ただただ金融機関が儲けておしまいになってしまうのですけれど。
僕は、以上のような政策的な経済対策に「頼りすぎてはいけない」と思っています。
なぜなら、以上の場合の金融機関の「ほぼ」リスクフリーの儲けは、預金者の機会損失とイコールだからです。
つまり経済を根本的に支える「消費」に、低金利のおかげで陰りが出る可能性が高いと思うからです。
さらに推測すれば、金融機関にとって、
「預金を国債運用すればリスクフリーで儲かるのに、わざわざリスクの高い民間企業や個人に貸し付けるのはバカバカしい」
というバイアスがかかる可能性も否定できないと思います。
あくまで個人的な考えに過ぎませんけれど。
では、どうすれば経済成長に繋がるのか・・・
僕のこれまた個人的な意見は、様々な経済的な理屈(というかへ理屈)を俯瞰し、「国民全体の将来への成長【期待】を政治的に作る事」以外に無いのだと思います。
人は、足下の経済状況がどうであるかより、将来に対する成長期待によって消費や投資を行う傾向にあります。
例えば、この日本でも、高齢者より若年層の方が「今のお金はないのに借金してでも消費する」という傾向がありますし、東南アジアに目を向ければ、その傾向はかなり顕著です。
東南アジアには「将来の成長」を信じている若年層が沢山居ますから。
経済政策とは、国民全体の勢いの「後押し」に過ぎないと僕は思います。
注意)低金利政策そのものを否定しているのではありません。経済政策に頼りすぎるのは良くないという意味のエッセイです。
2011年7月20日 板倉雄一郎
PS:
政策なんかより「なでしこジャパンの感動的な勝利」の方が経済成長に対して100倍貢献すると思います。
短期的にはお祭り気分の消費として、長期的には現在の子供達に元気を与えた事によって。
PS^2:
為替への影響を言う人が居ますが、為替は金利だけで動くわけではありませんから。