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ITAKURA’s EYE 「わくわく公共事業どーんとやっちまえ!」

公共事業には、様々な形や呼び名がある。

日本で言えば、ダム、港湾整備、交通網整備、そしてハコモノなど。

米国の場合であれば、日本の場合に加え、宇宙開発や戦争なんかも加わる。

公共事業のカタチが何であれ、極めて手っ取り早いバラマキの手段として少なくとも過去においては、この日本でもそれなりの効果とそれなりの弊害がありました。

 

さて、現在問題となっているデフレ・スパイラルを解決するために、子供手当て、エコカー減税、エコポイントなど、金融緩和などの間接的バラマキから、消費者へ直接お金をバラマく方法が検討され一部実行されていますが、それがどれほど効果があるのかについて大変疑問です。

というのも、そもそも・・・

「(成熟経済圏における)消費は、今いくらもっているかより、将来どれほどのキャッシュフローが期待できるかに依存する」

と僕は考えるからです。

 

将来のキャッシュフロー期待について言えば、これほどまでにメディアで「国家財政の先行き」について語られていることから、大多数の良識ある国民は、

「バラマキ・・・足元のキャッシュインフロー」 = 「将来の増税・・・将来のキャッシュアウトフロー」

を意識するはずですから、

「もらった分は、使ってしまえ」とは成りずらいわけです。

その点において、比較的耐用年数の長い家電や自動車の場合は、需要の先取りに過ぎないばかりか、自動車においては、(過去のエッセイでも書いたとおり)、急激なエコカー振興による既保有自動車の市場価値の急激な下落は、車種によってはエコカー減税額以上の場合もあり、エコカーに乗り換えても、エコカー減税分が消費者の懐を助けるとはとても言えないわけです。(もしかしたらそれに気がついていない消費者がほとんどかもしれません・・・メディアがこの部分を取り上げたことはほとんどありませんから。)

やはり、「仕事が継続的にあるであろうという見通し」によって初めて消費が拡大するのだろうと思います。

そこで、公共事業というバラマキについて考えてみることにしました。

 

世界中のあらゆる事業のコストは、突き詰めれば(←僕はルックスルーと表現します)、

「人件費」と「資本コスト」

に集約されます。

企業会計上、損益計算書には、「原材料費」だとか、「広告宣伝費」だとか、いろいろな表現がありますが、たとえば原材料費としての原油の場合でも、原油を掘った代わりに地中にドル札を放り込むことなどなどく、掘る技術を提供する人、掘る人、運ぶ人、精製する人などにお金が渡され、出来上り運ばれてきた原油を買い、何らかの事業に利用する企業の会計上に「原材料費」と記載されるだけで、お金を支払う先は、常に「働く人」になるわけですから、原材料費もルックスルーすれば人件費となるわけです。
以上の活動を行う上では、設備投資、運転資金など、いわゆる資本を必要とするわけで、その資本を提供する人に対して資本コストが必要になるわけです。
(資本コストも間違いなく人間に支払われるわけですが、この場合「労働」を伴っているわけでは無いので、人件費とは区別しています。また、石油利権などの権利についてもルックスルーすれば資本による権利保有ですから資本コストに分類されてしかるべきだと考えます)

このことから、「どのようなカタチの公共事業でも」、誰かの元にお金が入るということになります。

ただし、公共事業のカタチによって、受け取れる人の属性に違いが出てくるわけです。

たとえば、「スーパーコンピュータの開発」といった高度な技術が必要な公共事業の場合であれば、配分された予算の大部分は、スーパーコンピュータの入れ物としてのハコモノの建築に携わる方に比べ、高度なコンピュータ技術を持つ者に大きく分配されることになるでしょうし、ダム建設であれば、少なくともスーパーコンピュータの開発に比べ、現在メディアで散々取り上げられているような日雇い労働者への配分が増えることになるでしょう。

その意味で、ハコモノ、土木建築は、エジプトピラミッドの時代から人海戦術であるがゆえに、低所得者層を助ける一定の効果があるわけです。

(以上から「コンクリートから人へ」というキャッチの意味するところは、要するに、ゼネコンとそれにぶら下がる肉体労働者への配分を減らし、それ以外の産業へ配分するということになります。)

問題なのは、「穴掘って埋めただけでも公共事業」と表現するのが適当かと思いますが、ハコモノでは、投資波及効果がさほど見込めず、「バラマいておしまい」になるならまだよいのですが、実際には、「バラマいて増税」となることにあります。

かといって、「その事業にはどれほどの波及効果があるのか」なんて経済的予測は、「当たったためしが無い」わけで、あたらない理由は、「その事業をやるためのお役所的理由」をでっちあげる体質にあるわけです。

 

そこで、経済波及効果なんてどうせ当たらないこじつけはどうでもいいから、「明らかに夢のある公共事業」、且つ、「土木建築が伴う公共事業」を、ネットを使って全国民から募集し、投票し、やってみる!

ってどうですかね(笑)

 

国民みんなで、「あれやったらいいんじゃないか!」とわいわいやる。

面白そうじゃないですかね。

(だって、子供辺りに月々2万数千円の支給なんて細かくしちゃったら夢は作れないですよね。)

 

えっ?原資はどうするんだって?

そんなモン、はじめから無いじゃないですかぁ(笑)
もう何年もまともな財政じゃないんですから、今更関係ないでしょ。
国債バンバン発行すりゃいいじゃないですか!

(そういえば、S&PによるJGBの格付け、下がるみたいですね。)

 

僕だったら・・・

成田~東京駅~羽田を結ぶ「全路線地下のリニア」。

(↑ 千葉県人の言いそうなことですが(笑))

技術的には、15分ぐらいで結べるらしいですから、成田と羽田が、単に「成田ターミナル」、「羽田ターミナル」と呼ばれるぐらいに・・・
全線地下であれば、用地買収など余計なコストと時間を節約できる。

JRや京成などの既存インフラはどうなるんだ、なんてことは調整次第でどうにでもなるわけですから。
(たとえば、ディズニーランドによって明らかに収益が減少すると見込まれた京成谷津遊園は、京成がディズニーランドの運営企業であるオリエンタルランドの株主になることによって閉園された経緯などがありますよね。)

そこまで行かなくても、現在テーブルに載っているとされる新幹線の羽田空港乗り入れ。
(だって、羽田へのアクセスって、トロいモノレール、か、京急ですよ・・・しょぼすぎますよね)

第2山手線

前線地下で、現在の山手線の地上の駅の「常に真下に地下の駅」とすれば、利便性を損なわないで家畜同様の通勤ラッシュが軽減されるかも・・・僕は電車乗らないので都合はわかりませんが。

もちろん「全国版・駅前・幼稚園保育園事業」なんてのもありですよね。

他にもたくさんありますが、要するに、

1、考えるだけで、(予算は度外視すれば)、楽しく妄想できそうな事業・・・つまり夢がある。
2、明らかに現時点において需要がある事・・・需要創出といった根拠の薄い予測に基づかないこと。
3、事業開始時だけの雇用創出ではなく、運営においても雇用を必要とする事業。

そんな「夢のある」公共事業だと思うのです。

だって、どこかの田舎のなんとかダムって、夢ありますか?

 

「消費が将来のキャッシュフローの見込みに依存する」のであれば、それでどうして、バラマキ以上の波及効果があるのかって?

だって、夢があることに人はお金使うでしょ。

もっと踏み込んで表現すれば、「エロさの経済価値」というエッセイでも記述したとおり、成熟経済の日本において、「生活必需」なんてことでは、人は財布の紐を緩めないわけですが、「夢」には、お金払うと思うんですよね。

思うだけなんですけれど(笑)

でも、夢って、それ自体の価値算定って事実上不可能だから、ノリで支払う可能性が高いと思うわけです。

ぶっちゃけ経済なんて、人々の将来に対する妄想が作り上げる足元なのだと思いますから。

 

ということで、「言うだけ」は簡単です(笑)

 

2010年1月28日 板倉雄一郎

 

PS:
ホント、今、夢のある話って、無いですよね。

コストの話ばっかり。つまんねー世の中だと思います。

その「つまんなさ」が、財布の紐を堅くしているのだと思いませんか。

 

PS^2:

昨年末からふと思い立って、大嫌いだったゴルフを「やりすぎ」ました。
結果、年始から左の肩が痛い。
ただゴルフだけで左の肩が痛いのなら、「お前、どんだけダフってんだよ!」となりますが(笑)、そうではなくて、40年も前の交通事故で左の肩を骨折した後遺症が、ゴルフによる刺激が加わることによって表面化したというわけです。
ゴルフしなくても、寒くなると痛かったのですけれど。
整形外科に通い、現在リハビリ(←本当にリハビリしてんの)中ですが、本人の感触では、恐らく治らないと感じています。
もう一ヶ月近く、打ちっぱなしにもグリーンにも出ずに休ませているのに、普段の生活でも「痛てて」ってことがある程です。
せっかくクラブセットを新調して、ルンルンだったのにとっても残念です。

あーあ、今年のプライベートは、ゴルコンと決めていたのに(涙)

過去は、どんだけ逃げても追いかけてきますよね。





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