板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「ヴィジョン提案・自給率アップ」

どこの国も、どこの企業も、どこのメディアも・・・短期の「スージ」に翻弄されていると思いませんか?

3月末決算に向けて、金融機関などのバランスシートが傷つくから、PKOしましょうとか、
3月末決算に向けて、企業の資金繰りが悪化しそうだから、日銀がCP買いましょうとか、
郵貯に金があるから、その金を金融機関にぶち込みましょうとか、
そんな「短期」の話ばっかりですよね。

で、そんな短期の「スージ」に翻弄された一時的、且つ、表面的な対策を積み上げながら、私達は一体どこに向かっているのでしょうか・・・残念ながら、誰も、「ヴィジョン」を示せていません。

「対策」や「政策」とは、一定の「目標」なり「目的」があってこそ、その必要性や妥当性、そして合理性が検証できるわけです。当たり前のコンコンチキです。

ところが、現在の日本には、「ヴィジョン」が無い。
ヴィジョンを示すべき政治は、選挙に勝つことを「直接的に」考えているばかりで、上記の経済対策における表面策と同じレベル。

株価が、企業業績(←キャッシュフロー)を担保にして形成されるべきであって、株価を直接刺激したところで一時的且つ表面的に過ぎません。
政治における選挙も、ヴィジョンに基づく具体的政策があって初めて票を獲得できるという順序であるべきでしょう。

民主党であろうが自民党であろうが、どっちに転んでも、私達日本人が「将来に対する希望」を持つことができるんでしょうか(笑・・・排他的に民主優勢に見えるだけで、民主党に「希望」を感じている有権者が多いとはぜんぜん思いません。)

と、評論ばかりしていてもしょーがないので、本日は、僕が考えるところの「日本のヴィジョン」を提案してみたいと思います。

「自給率アップによる国家の自立性と永続性の確保」

これです。

オバマ政権は、「グリーン・ニューディール政策」を打ち出しています。
非常にわかりやすいヴィジョンであると同時に、エネルギー効率の「非常に悪いアメリカ」にとって、この政策は合理的だといえます。

一方のわが国の場合、先進国中、「最もエネルギー効率の良い国」ですから、「ヴィジョンとして」グリーン化を訴えたところで、説得力が乏しい上に、「投資効率」が悪いという非合理性もあります。
(↑ 一層のグリーン化の必要が無い、という意見ではありません。)

わが国の問題は、過去のエッセイにも書いたとおり、その経済モデル上、どうしても他国の経済状況や資源価格に翻弄されてしまうという構造にあります。

CDSなどのインチキ金融商品に多くの日系金融機関が手を出していなかったにもかかわらず、間接的に金融機関は傷つき、
毎日毎月毎年、技術を積み上げ、高度で高効率で高品質の工業製品を作り続けているにも関わらず、輸出先国の経済状態の悪化によって、輸出が落ち込み、
様々な資源を海外に依存していることによって、資源価格が高騰すれば、直ちにスタグフレーションの兆候に見舞われ、資源価格が暴落しても、輸出先国の経済悪化によって、その恩恵はさほど受けられない・・・

これらの問題の根本には、「日本の自給率の低さ」が共通して挙げられます。

先のエッセイ「経常黒字あってこその内需拡大」にも書いた通り、「カテゴリーを無視した内需拡大」では、個別の内需関連企業の業績はアップするが、内需が拡大することによって消費も拡大し、資源を海外に依存するわが国の場合では、純輸入額が膨らみ、経常赤字になる可能性があります。
経常赤字が続けば、国家としての継続性に問題が生じてしまいます。

海外から資源などを輸入する以上に、海外に対して高付加価値商品の輸出が必要になりますが、どれほど良い商品を作ったところで、輸出先国の経済がダメージを受けていれば、売れません。

これが現在の経済状態であり、この構造を根本的に改善するためには、自給率のアップが必要になります。

いくつかの否定的意見が聞こえてきそうです・・・

1、保護主義傾斜はまずいのではないか

自給率アップは、確かに保護主義傾向の政策です。
しかし、先進国中、この日本ほど、資源、エネルギー、食糧における自給率の低い国は他にありません。
したがって、関税増などによる「いかがわしい保護主義」なら、他国やWTOから文句を言われて当然ですが、農業支援や酪農生産効率のアップ、メタンハイドレートなどの新エネルギーの開発などの「積極開発策」であれば、文句を言われる筋合いはありません。
その上、「自給率アップ」というヴィジョンの元、消費者が「自らの選択」によって「日本産」を選ぶのであれば、それこそ他国に文句を言われる筋合いのものではないわけです。
ここで、「ヴィジョンの必要性」がお分かりいただけると思います。

2、食糧自給率なんてアップできるんですかねぇ

これ、できます。
たとえばマグロ・・・築地市場に上がってくるマグロの内、どれほどが産地に返品されるかご存知ですか。
いくつかの鮨屋に聞いたところ、その「大部分(←一説によると70%以上)が「値が付かず」返品されているそうです。
肉質が悪いとか、脂が乗っていないとか、そういった「高品質」でなければ「根が付かない」らしく、返品された「低品質(しかし十分に食べられる)」のマグロは、缶詰になったり、輸出されたりしているそうです。
たとえばきゅうり・・・皆さんがスーパーで買うきゅうりは、恐らく「まっすぐに綺麗に育ったきゅうり」だけですよね。
実際には、曲がったきゅうりもたくさん作られていますが、マグロと同じ理由で、市場に上がってこないわけです。
具体例を書き出したらキリが無いのですが、要するに、現在、食物自給率30%~40%程度と低い上に、食物のおよそ半分程度が「捨てられている」という現状を、「消費者の意識」を変えることによって、大幅に改善できるはずです。

「自給率アップヴィジョン」によって、日本人の持つ「もったいない精神」を呼び起こし、まずは消費の段階での十級率改善を図ります。

それと平行して、農地の整備、酪農への支援、酪農政策の見直し、そして、新たに効率の良い酪農「企業」を育てることです。

3、とはいえ、原油や鉄鉱石は日本にはないでしょ。

いえいえ、ちゃんとあります。
というと誤解を招きそうですが・・・

「企業の管理部門などのコスト部門は、企業の利益には貢献しない」
なんていう話は、いまどき誰にも通用しませんよね。
コスト部門であっても、コスト削減によって、しっかり企業の利益に貢献できるわけです。

これと同じように、「グリーン化」、「高効率化」は、すなわち原油や資源を「生み出す」ことと同じ効果をもたらします。

現在のように、「それがどれほどの経済的、地球環境的な効果をもたらすのか良くわからない」といったあやふやな根拠に基づいたグリーン化は、特にエネルギー効率の良い日本の場合、あまり進まないと思うわけです。
しかし、「輸出先諸外国の景気後退に影響を受けた日本の景気後退」によって、「サラリーが減ってしまうかも」とか、「首になるかも」とかの「身に迫る問題」を誰もが認識している「今こそ」、その解決のために「自給率をアップしましょう!」というスローガンに基づいたグリーン化は促進されるのではないかと思います。

つまり、グリーン化などの具体的政策は、ヴィジョンがあって初めて具現化されるというわけです。
現在の政策は、「短期的」、「成り行き任せ」、「対処療法」に過ぎず、どこにも「ヴィジョン」が無いわけです。

「今の政策一つ一つをやってみたら、僕らの未来はどう改善するんですかね?」
それが、誰にもわからない。誰も答えてくれない。
それじゃぁ、国民の元気は出てこないですよね。

30年後の日本の自給率を、エネルギーで〇%、食糧で〇%、その他資源で〇%などの目標を定め、且つ、その効能・・・為替や諸外国の経済状況、およびコモディティー価格に翻弄「されにくくなる」ことや、内需拡大による景気浮揚策を十分に実行できることなどを挙げることにより、日本のヴィジョンを明確に提示すること・・・これが今必要なのだと思います。

ヴィジョンを明確に打ち出し、国民の支持を得ることができれば、それを実現する上での様々な障壁(既得権者からの反発、諸外国からの反発、法整備、予算編成、などなど)を、それこそ「勢い」で解決「しやすく」できるのだろうと思います。

現在の政策は、すべてが「バラバラ(=共通のヴィジョンが無い)」。
したがって、
報道されない細かい部分は国民的議論にならないし⇒放置される。
法整備一つとっても、バラバラに議論されるから効率が悪い⇒いつか国民も忘れる。
特殊法人の無駄遣いも、一つ一つバラバラに問題にされるからどれも解決しない。
(悪徳官僚は、時間経過によって国民が忘れることを願うばかり)

書き出したらキリが無いので止めますが、とにかく、「一つの具体的なヴィジョンに基づいた政治、政策」を行わなければならないし、それを行う上で、現在のように国民全体が危機に瀕している「今」が一番いい。

と思うわけです。

すべての問題について・・・

「それって自給率アップになるんですか?」

という明確で、単純で、しかし具体的なヴィジョンを通して分析⇒対処する。

これが必要なんじゃないでしょうか。

自給率アップ政策は・・・

1、財政出動や税制優遇などによる資金提供を、一つのヴィジョンに基づき選択&集中できる。
2、経常収支悪化をさほど考慮せず内需拡大を実現できる。
3、内需関連企業の業績もアップし、雇用も促進される。
4、新規のビジネスチャンスが生まれる。
5、ヴィジョンに反する非効率、無駄遣いを排除できる。

そして何より、明確なヴィジョンの提示を受けた国民が自らの将来に対して希望を持つことができ、げんきになる。

というわけです。

もちろん、完全自給なんてできるはずもありません。
しかし、今以上に自給率をアップすることは絶対に可能です。
自給率が今以上にアップすれば、他国の経済に翻弄される程度が軽くなります。
自国の自国内に対する政策が、ダイレクトに国民生活を改善することができます。

他国の経済状況に翻弄されることから逃れるには、自給率アップ「しかない」のです。
自給率アップは、分母である人口を減らすか、分子である自給を増やすしかないのです。
小学生でもわかることです。

これ、どうですかね?

票田ばかり気にしている政治「屋」、
身の保全にしか興味の無い官僚「屋」、
ゼロサムゲーム(いや今やマイナスサムゲーム)の奪い合いに疾走するビジネス「屋」、
そんな連中にこの国を任せておけないと思うのは、僕だけでしょうか。

もっと大局的なヴィジョンを持った「政治家」が必要ではないでしょうか。

2009年3月2日 板倉雄一郎

PS:
結局、首長から変わるしかないのでしょうかねぇ日本の場合。
だれか出てこないですかねぇ国会にも。
経済がわかっていて、政策通で、存在感があって、酔っ払いじゃない人(笑)

PS^2:
最後は、「(水を含む)食べ物」なんですよ。
原油が無くたって、食べ物あれば生きていけるんです。
原油がいくらあったって、鉄鉱石がいくらあったって、食べ物なくっちゃ死んじゃうんです。
日本の食糧自給率は、カロリーベースで30%台です。
これ、由々しき問題です。

PS^3:
最近、お食事会、減ってます(トホホ)
皆さん、不景気のせいか、「新規物件の獲得」より「既得物件の温存」に勤めているようです。
縮こまってしまってますよね、世間は。
せっかく、イベントなどの縮小により「アンヨの綺麗なお姉さん」のデフレーションが始まるっつーのに(笑・・・日産も海外でのモーターショウをキャンセルするようですね)

株価が、足元の業績より、将来の業績を頼りにするように、人の元気も、現状より「将来への希望」に依存するのです。
だから、若年層は収入以上の消費をするし、老いた人間は消費を極力抑えるわけです。
若年層の元気が無ければ、日本の元気も得られないんですよね。

経済は人の心が動かす。
だから、希望を持てるヴィジョンが必要なんです。

なんだか僕一人だけ、元気な感じがします。
僕が元気な理由は・・・

1、生活のための固定費が極端に少ない(変動費は相変わらず少なくは無いです)
2、ビジネス上の固定費も、イクイティー組織だから少ない。
3、健康でまだまだ(若い女性に対して)イケルと勘違いしている(笑)
4、勘違いしているからストレスが無く、ストレスが無いから体も元気で居られる。

でもぉ、彼女(←定義は、排他的継続的に性交渉を行い、心の満足も得られ、大切だと思える女性)の一人ぐらい欲しいなぁと思う今日この頃だったりします。





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