板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「需要は探すのか創るのか」

何か事業を始めようとするとき、表題の疑問が常に頭をよぎります。

たとえば、「ある部品を自動車に取り付ければ、燃費が10%改善する」といった商品を創るための技術が手元にあれば、容易に投資家や従業員を募ることができるでしょう。
しかし、そんな都合のよい技術は、そう簡単に手に入るものではありません。

たとえば、「ケータイ通話料を従来の『実質』半額に設定しても、十分に儲かるビジネスモデル」があるとすれば、この場合も、容易に投資家や従業員を募ることができるでしょう。
しかし、それが資本調達上のテクニックによって成されているとすれば、結果として、よく言われることですが、「価格競争で挑む企業は、いずれ価格競争にしてやられる」という結果になってしまうでしょう。

このように、

「明らかな需要が認められ、その需要に応えることができる競争優位性のある商品を提供できるチャンス」

の場合、その事業の執行判断は極めて容易です。
考えるべきことは、投資家にとっての予想利回りと期待収益率の比較だけとなります。

そんなチャンスにめぐり合いたいものですが、

「(ある商品プランに対して)そんな需要があるかどうかわからないが、あるかもしれない」

というところからのスタートが、ベンチャーや中小企業の新規事業スタートの現実ではないでしょうか。
上記のように、その需要が明らかに認められる場合、十分な資金力と労働力とブランドを既得している大企業の土俵ですから、少なくとも中小/ベンチャーには勝ち目がほとんどありません。

中小/ベンチャーの場合、「やって見なければわからない」というリスクを取ることが、マンマとうまく行った場合の高収益に繋がるという「見方によっては強み」を生かさなければ、その存在意義さえ疑問になります。 

表現を変えれば、

「今、目の前にある明らかな需要を前提にした事業を行うのか、それとも、新たに始める事業によって、需要を創造するのか」

と言うことになります。

どちらの事業の場合も、事業に関わる者が、この明確な事業スタイルの違い(リスク=不確実性の違い)を常に認識していることが、その事業の成否を分ける第一次的に重要なことだと思います。

既存需要を前提にした事業を執行するにあたり、「うまくいけば、ついでに〇〇な市場にも売れるかもしれない」などという考えは、「おまけ」程度に捉えた方がよいですし、新たに需要を創造しようとする事業の場合、「そんな需要は今のところ無い」という理由で、事業を否定することは避けなければならないと思います。

新たに事業を始めようとする場合、常に、この大きく分けた二つの事業スタイルについて、利害関係者全員に、「どっちのモードなのか」をしっかり理解せしめることが、企業家の最初の大切な仕事なのだと思います。

こんなことを書いたのは、現在、板倉雄一郎事務所が母体となり、スタートさせようとしている2つの事業が、それぞれ以上の2つの性格を持っているからです。

一方は、「既存需要」を前提にした事業であり、他方は、「需要創造」を前提にした事業です。

ところが、既存需要を前提にした事業の参加者には、過去に新規事業に関わった経験の豊富な人間が集まり、需要創造を前提にした事業の参加者には、既存の仕組みの中で経験を積んだ者が集まっている、という「リソースとスタイルの不一致」が認められます。

今、僕はそれをどうやって解決するか、とても悩んでいます。
(↑ この場で愚痴をこぼしてどうするの(笑))

しかしながら、「やるべきことがある」ということは、とてもハッピーなことです。
どちらの場合も、「事業を否定する問題点」と捉えるのではなく、「解決すべき問題点」との認識を持つことが大切です。

2008年9月12日 板倉雄一郎

PS:
本日のエッセイは、読者の皆様に何らかの価値を提供すると言うより、「独り言」に近い内容になってしまいました。
大変失礼いたしました。





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