欧州のバラマキには、「実質的効果」を検討しようとする節度があり、
(でも、悪く表現すれば、後手後手なのかもしれないけれど)
米のバラマキには、「基軸通貨の優位性」を背景にした強引さがあり、
(でも、悪く表現すれば、何でもありですが)
問題は、日本のバラマキ・・・
今朝のテレビ番組で、「国営漫画喫茶」なるタイトルの官による間抜けな無駄遣いが話題になっていました。
要するに、漫画を「芸術」と捉え、絵画に美術館があるように、漫画にもメディア館なるものを100億円以上かけて作る案が文化庁から出ているらしいのですが・・・
エコポイントにしても、1000円高速にしても、定額給付金にしても・・・
なんつーか、日本の官製バラマキって、ものすごく「稚拙」だと思いませんか?
歴史を見る限り、官が民間ビジネスに関わって成功した例などまるで無い。
たとえば、「通信」は、官が関わりすぎ(というかその昔は国営)で、結果として国際競争力を生み出すことができなかったわけですが、他方、官が関わろうとしたが、結果として関わらなかった「自動車」については、(確かに最近は悪いですが、少なくともこれまでは)、明らかな国際競争力が生まれたわけです。
バラマキを通じて、結果として民間の事業に対する官の「影響力」が徐々に増加する傾向は、全くいただけない、と強く思います。
メディアが伝えるところによると、民間のエコノミストらのコンセンサスは、「2009年後半には景気は底を打ち、上昇傾向になる」とのことらしいのですが・・・
それって、一体誰に、「言わされている」のかなぁ???
と思います(笑)
仮に各種統計数値が好転したとしても、それは「名目成長」に過ぎないと思います。
何度も書いている通り、「長期金利」は、市場心理によって支配され、バラマキによって中央銀行の影響力が減衰していることと合わせて考えれば、「実質成長」には、しばらくの間(恐らく数年)移行しないだろうと思います。
だって、企業活動の最終消費者が職を失っているわけですからね。
今週の割と大きなニュースに、「ソニー、調達先を5000社から2500社に半減」、というのがありました。
確かに、「一次的には」、ソニーの株主にとって悪いニュースではありませんが、ソニーとの取引を解消される企業のすべての利害関係者にとっては最悪のニュースです。
こういったダウンサイジングは、当該企業にとって重要なことではありますが、結果として、最終消費者の消費意欲は明らかに減衰してしまうわけですから、中長期的には、ダウンサイジングする企業にとっても、悪い結果に繋がります。
バラマキの話に戻ります・・・
人がお金を消費に回そうとする必要条件とは、
「今、お金を持っていること」ではなく、
「ある程度安定的なキャッシュフロー(←たとえば給与)が見込めること」
ですから、バラマかれた手元のお金より、「合理的な成長期待」の方が消費刺激には遥かに重要なわけです。
したがって、たとえば僕が提案している「自給率アップヴィジョン」のような合理的且つ希望を持てる「国家としての変化」が必要なのだと思います。
こういうことこそ、「政府による音頭と交通整理」が必要なことだと思います。
現在のように、
「バラマいて、じっと我慢していれば、そのうち景気循環の好機に入るはず」
なんてことじゃ、少なくとも自力では好転しないのだと思います。
「自力がダメでも、じっと我慢していればアジアの再成長が始まる!」
なんてことでは、結局のところ、諸外国の経済状態に『ものすごく』翻弄され続ける日本経済は、せっかくの「変化へのチャンス」を逃してしまうでしょう。
2009年5月22日 板倉雄一郎
PS:
このところ、不景気を益々実感します。
企業が広告宣伝費を削減すれば、回りまわってイベントコンパニオンやモデルの仕事がなくなります。
で、彼女達は、少なくともルックスが良いですから、男に関しては選べる立場を維持します。
結果として、持ってそうな男性に対して「お金」を要求するような女性が増加傾向にあると感じます。
不景気は、人の心を蝕む。
このことこそ、不景気による最も重大な負の側面です。
世界中が、「Making Numbers」に走り、「Making Mind」を忘れてしまっているように思います。
名目成長が実現したとしても、それには格差拡大が伴う成長となるのでしょう。
現在でも、「スーパーリッチ」は、ぜんぜん元気です。
何しろ、Rolls-Royceが2008年、この日本で過去最高の販売台数実績ですからね。
こういったスーパーリッチの方々の特徴を一つ挙げれば・・・
「Googleにその方の名前を入れても、一件もヒットしない」
です。
それが意味するところ、結構深いです(笑)