板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「経営のスピードとは」

「経営のスピードとは、どれほど意思決定を遅らせることができるかである。」

と僕は思います。

「経営にはスピードが大切だ!」などと良く言われます。
この場合の「スピード」を日本語に訳せば、当然ながら「速さ」であって、間違っても「早さ」ではありません。
にもかかわらず(経営者としての過去の自分も例外ではありませんでしたが)、多くの経営者が「早さ」を求めがちです。

「他社よりも【早く】商品を世に出したい!」
「世界初の技術であることを【早く】証明したい!」
「このアイデアが誰かに盗まれる前に【早く】商品化したい!」
などなど。

これらが仮に満足されたところで、So What!? (「だからぁ?」)
となる場合が多いのではないでしょうか。

世界初だからと言って、必ずしも売れるとは限りません。
競合他社より「早く」商品化できたからといって、他者より売れるとは限りません。
もしかしたら後発の方が市場において有利な場合もあり得ますし、急ぐあまり必要以上の投資を余儀なくされてしまうことだっておおいにあり得ます。その投資を回収するために商品価格を引きあげなければ成らないこともあるでしょう。これでは価格の優位性を維持できません。

つまり、誰よりも「早く」ことを始めることが、誰よりも優位に立つということでは決して無いということです。

では、経営のスピードとは、一体何なんでしょうか。
一体、何に対するスピードが大切なのでしょうか。


僕は過去に「早さ」を追い求めたがために大失敗をやらかしました。
自身が思いついたアイデアの世界初稼働の為に、経営資源を浪費し、バグだらけのシステムを作らせました。
その結果「世界初」の実現はできたものの、後の巷での失敗に対する評価は・・・

「板倉さんの事業は早すぎましたね」

となるわけです。
(もちろん「早すぎたこと」だけが失敗の原因ではありませんが、このエッセイに関連することとして取り上げています。)

僕の大失敗のわずか2年後、いわゆるネットバブルが発生し、表現は悪いですが、ネットビジネスと分類されればいささかブラック気味の企業でも株式を上場し多額の資金調達ができる時期がやってきました。

つまり僕はタイミングを逃したわけです。
それも、のんびり、ぼーっとしていて目の前のチャンスを逃したのではなく、「早さ」の為に一生懸命働くことによってタイミングを逃してしまったわけです。
何とも情けない。

ビジネスに「もし」は厳禁ですが、僕がもし現在の知識と経験を持って過去に戻れたなら「早さ」ではなく「速さ」を追求したでしょう。

すなわち・・・

GO!をかければ直ちに稼働できる「組織のスピード」と、そのための「準備」

を追求しただろうと思います。

ここで言う「準備」とは、アイデアを思いついたことの優位性を知的所有権のカタチで押さえることや、例えばコンピュータとネットワークシステム上にモックアップの構築を行っておくことなどです。
そうすれば、仮に他社が同様のことを自分たちより「早く」実現したところで優位性を保つことができます。

また、ここで言う「組織のスピード」とは、意思決定者に「GO!」を言われてから何をするか考えるのではなく、「GO!」を言われれば何をどんな優先順位で実行すべきかを予め理解している組織のことです。
もし、以上のような準備と組織のスピードを実現できれば、GO!という意思決定を他社に対して十分に「遅らせる」ことができます。
意思決定を遅らせることができれば、市場に商品を投入する「タイミング」をじっくり見極めることが可能になります。
逆にスピードを持たない組織であれば、商品投入の準備に相当な時間を必要としますから、適切なタイミングを相当以前から「予測」し、他社より「早く」準備を始めなければならなくなります。言うまでもなく「予測」は、その期間が長くなればなるほど確度が落ちるわけですから優位性など無いわけです。

「経営のスピード」を構築できれば、
商品投入の最適な「タイミング」を見極めるまで「意思決定を遅らせる」ことができ、
結果として「効率の良い経営」を実現できる。

というわけです。

断っておきますが、スピードを得る方法が従業員のケツを蹴飛ばすだけでは継続性に問題あり、ということになりますのでご注意を。

2010年12月7日 板倉雄一郎


PS:
本日、「板倉雄一郎の実践・起業塾」のページをオープンいたしました。
今後、詳細が決まり次第、順次アップデートして行く予定です。
(今日現在での新しい情報は、ストリーミングビデオだけなのですが、観てやってください。)
なお、アップデートや受講者募集などのリアルタイムなお知らせは、ツイッターの事務所アカウント(@itakura_office)よりつぶやきますので、フォローをお願いいたします。

PS^2:
開塾に合わせて、塾の参考図書としての「失敗から学べ」の電子書籍化を進めています。
(ちなみに本日のエッセイの内容も表現は異なりますが同書に含まれています。)
一両日中にはアップルへ新規アプリ申請を完了できると思いますので、年内に発売可能かと思います。
(何しろアップルマターなので、お約束はできないのですけれど。)
当初、キャンペーン価格(期間限定もしくは本数限定)にて発売予定ですので、こちらの情報に付いても、ツイッター事務所アカウントからお知らせいたします。









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