板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「非伝統的政策手法」

言葉って面白いですよね。
上品な表現、柔らかい表現、おとなしい表現、遠まわしの表現・・・これらの表現は、一般的に、人間関係を良好に維持するために、「良い表現方法」、と思われているようですが、ぶっちゃけストレート系を好む僕としては、「余計にわかりづらくなるだけ」、と思います。

そもそも経済は複雑で、様々な要因の「相互影響(←循環参照)」によって成り立つから、わかりづらい。そんな経済について、わざわざ、遠まわしの表現を使っていたのでは、益々わかりづらい。

「非伝統的政策手法」なんて、その際たるものです。

これ要するに、「なんでもあり」、ということを意味します。

いっそ、「なんでもあり政策」と表現した方が、多くの方々の理解を得られると思うのですが・・・

日銀による国債の買取枠を増加(月1兆4000億円を1000億円~2000億円増加)させるそうです。

日銀による国債買取・・・直接の目的は、「(長期国債価格下落による)長期金利上昇を抑えこむため」、ですが、これ、市場に流通している国債を日銀が市場(金融機関)から買い取る場合でも、政府が発行する国債を直接日銀が買い取る(のは基本的にNGですが)場合でも、ルックスルーすれば要するに、政府が財政出動のために必要なお金を、日銀から借りるということを意味します。

こういうことを「やりすぎる」と、通貨価値を維持することが難しくなるので、「伝統的政策手法」の観点からは、ダメ出しされるのですが、「んなこと言ってる場合じゃない」=「なんでもありだぜ」ということになっているわけです。

仕方ないですよね。
地方も政府も、税収は激減。
しかし一方で、景気対策のためのバラマキを継続しなければならない。
つまり、金が無い。
なので、「印刷」しましょう! 何でもありだぜ!

今は、世界的に「デフレーション」が懸念されていますが、(だからこそ通貨価値下落を伴う政策に対して誰も反論しないわけですが)、これらの、なんでもあり政策が、「功を奏し」、景気が上向き始めたときに、過度なインフレになる懸念を誰か考えているのでしょうか。

人間がやることのほとんどは、「今の問題」より、その対策による「将来の後遺症」の方がずっと面倒なことが多いのです。

事実、「違法でなければなんでもあり」という価値観に基づき、目の前の利益を金融工学を屈指して行ってきた「後遺症」が現在の世界的な金融危機とそれに伴う経済減速です。

その解決も「なんでもあり」。
益々将来の後遺症が心配になります。

参考エッセイ:ITAKURA’s EYE 「長期金利上昇」

2009年3月16日 板倉雄一郎

PS:
互いに嫌いではない程度の男と女が一つの部屋にいて、酒を酌み交わし、キスをし、セックスをすること、それ自体は、気持ち良いだけで、簡単なことで、実は何も問題は無い。
問題があるとすれば、その行為による後遺症ですよね(笑)





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