板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「ベンチャーのレーゾンデートル」

副題「既得権者は成長を拒む」

中国高速鉄道事故を受け、様々な報道、ネット上の情報発信が続いています。
これらを見て思う事は、

「中国民間は、経済的にも文化的にも成長しているが、中国共産党の対応は時代錯誤」

同じ国の国民、同じ民族であるにも関わらず、この違いは何かと言えば、

「既得権者と非既得権者」の違いではないでしょうか。

もっと正確に表現すれば、

「既得権者は、変化や成長を好まない」

と言えるのだと思います。

さて、このような現象は、中国に限らず(中国が際立っているに過ぎず)大なり小なり、どこの国にも存在します。
例えば、日本の今であれば「電力利権」なるものも一つの象徴的なケースでしょう。

大切な事は、このような現実を「どう捉え」「どう生かすか」だと思います。

たとえばファブレス。
半導体に限らず、生産工場設備という資産をバランスシート上に持つ大手企業が市場を席巻し、生産工場設備の増設による市場占有率拡大を進めているうちは、莫大な資本を持つ大手企業の優位性が「一見」確保されているように見えます。
しかし、生産設備など一切持たないがマーケティングに優れたベンチャーが、生産工場設備を持つ企業と、成果物を利用したいクライアントの間に入り、
「御社の都合に合致する低価格生産が可能な工場をご紹介します」
といったサービスを展開した場合、契約の主導権が生産工場設備を持つ大手企業からベンチャーに移行するというケースが発生する事は歴史を見ても明らかです。
この場合、多額の生産設備投資を消化するために比較的高い生産価格を提示した企業の生産工場設備は稼働率が低くなり、バランスシート上では「資産」ですが、本質的には「負債」となります。

この例のように、ベンチャーの切り口次第では、既得権者(この場合は莫大な資本を必要とする生産工場設備を持つ企業)の資産を「お荷物」に転化できるわけです。

「既得権者が既得権を守ろうと設備に頼る姿勢」があるからこそ、ベンチャーが成長するチャンスがあるわけです。
これをポジティブに捉えればベンチャーの成功機会であり、突き詰めればベンチャーのレーゾンデートル(存在意義)というわけです。
結果として、人類は成長する。

競合他社より「ちょいと優れた機能」を提供しようとする企業を、僕の定義ではベンチャーと呼びません。
また、金融マジックによって既得権者を敵対的に買収しようとする行為も、僕の定義ではベンチャーと呼べません(笑・なんのことですかね)
あくまで上記のような「イノベーション」を事業を通じて具現化する企業をベンチャーと呼びます。(あくまで僕の定義に過ぎませんが)

どこの国でも、どの時代でも、人類は、

「既得権者から新しいアイデアによって既得権を奪う闘争」

によって成長する事を繰り返しているのだと思います。
また、この「既得権の奪い合い」こそ、人類の成長の源泉であると思います。

そして、今のベンチャーは、成功と共に、いずれ既得権者となり、新しいベンチャーにその座を脅かされることになるのでしょう。
僕は「それで良いのだ」と思います。

以上から、既に多くの市場占有率を確保しているにもかかわらず、チャレンジを続ける企業こそ「エクセレントカンパニー」と呼ぶのだと思います。

2011年7月27日 板倉雄一郎

PS:
以上から、ただただ「金融マジックによる既得権の取得」など、全くベンチャーなどではないという過去の僕の一連の主張の趣旨がお分かり頂けるのではないかと思います。
そんなのが「起業家の夢だ」などと多くの起業家志望の方々に思ってほしくなかったのです。
(↑ なんのことだかお分かりですよね^^)

PS-2:
また余計な事を書きますが(笑)
恋愛だって、彼氏彼女を奪おうとする他人が居るからこそ、ダイナミックな恋愛になり、愛が深まるという見方もできると思います。

PS^3:
最近facebookをメインにしています。
「友達リクエスト」は、条件さえ整えば承認させていただいています。
よろしくお願いいたします。

条件1:プロフィールが公開されているか、「友達リクエスト」の際にDMにてディスクローズがある事。
条件2:「ウォール」が公開されている事。
条件3:「実名」であること。(これは確認のしようがないのですけれど)
条件4:「共通の友達」が複数居る事。
です。
生意気ですいません。




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