板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「ネットビジネスモデルの条件(その5)電子化」

「i文庫HD」というiシリーズ向けのアプリは面白いです^^
PDFファイルをあっという間に電子書籍化して、ページめくりも「ぴろ~~ん」て出来るようになりますし、文章や表紙の体裁も非常に良く、実際の紙に印刷されたように見える文字は読んでいて疲れません。
有料(たしか700円)ですが、付属でたくさんの「青空文庫」がくっついてきます。

板倉雄一郎事務所の小冊子シリーズ(SMUKISSDeepKISS)の冊子印刷用PDFが手元にあるので、試しに(先のエッセイで紹介したDropbox経由で)iPad上のi文庫HDに読み込み、読んでみたところ、「何もしていないと同じなのに電子書籍になっちゃった」って感じです^^


情報コンテンツ・・・映画、雑誌や書籍、アプリケーションソフトウェアなど・・・の電子化は、現在それらを扱う業界にて、「コンテンツ提供者ではない方々」の予測を越えたスピードで実現する。

このところ、iPadをしこたま使いまくって、以上のような確信を持ちました。

その根拠1:予想以上に身近な方々がiシリーズを使っている現実

これは、僕自身がiPadに触れて「一ユーザとして感じたこと」だけではなく、Appleによる販売実績レポート、当事務所のプレミアクラブ会員の方々のiシリーズ使用率、iシリーズ向け電子書籍の販売実績、そして、僕が著作権を保有する商用書籍の電子化に向けたオファーが複数あること・・・現在、電子化に向けて作業進行中です!決まったらこの場でご案内いたします・・・などなど、電子化への潮時を肌で感じることが多くなったこと。

その根拠2:価値提供に応じた最適配分が可能になる

書籍を例にすれば、現状、エンドユーザが支払った価格(=書籍本体価格+消費税)の内、作家(≒著作権保有者)に対する配分は、わずかに10%弱(・・・本体価格の10%が標準的印税率ですが、消費税を考慮すると10%弱になります)です。
残り90%強は、出版社、印刷会社、書店を含む流通などに配分されているというわけです。

そのおかげで、エンドユーザが得る価値は、「良質な紙に印刷された物体としての本」。
逆に言えば、エンドユーザは、情報をその物体として受け取る代わりに、たくさんの「コンテンツホルダー以外の方々」の人件費を支払っている、ということになります。

さて、一度でも電子書籍やそれに順ずるツール・・・スマートフォンでもiシリーズでもキンドルでも・・・に触れ、電子書籍を「体験」した人にとっての現状の物体としての本の価値は、支払う価格に見合う価値でしょうか?

「ならない!」

これが僕の結論です。

また、「一読者」という側面だけではなく、作家としての立場のある僕にとって、印税10%・・・1500円+消費税の書籍で得られる印税額は一冊あたり150円・・・は満足なのか?

「満足しない!」

これも僕の結論です。

つまり、川下であるエンドユーザ(読者)も、川上であるコンテンツ提供者(作家)も、どちらも現状の配分に満足していない可能性が高いと、少なくとも僕は思います。

エンドユーザとコンテンツホルダー以外の業界の方の中には、電子書籍に否定的な意見を持つ方も結構いらっしゃいます。
たとえば、電子書籍が普及しているアメリカと日本の違い・・・米では本が高い、紙質が悪い、重くて大きい、リアル書店が少ない、再販制度がないなどなど・・・を理由に、日本では普及が遅れれるとかいった意見があります。
けれど、こういった意見は、「(業界の)変化を免れるための結論ありきの理屈」に過ぎないのだとはっきり言ってしまいましょう。
(というかそういった否定的意見を持っている方ほど、iPhoneで電子書籍読んでいたりするものです(笑))

だって、「最終的にお金を支払う方」、と、「最終的にお金を支払う方が本質的に求めるモノを作っている方」の両者が、電子化の方がいいぜ!ってことになれば、そんな否定的な理屈はあっという間に吹き飛んでしまうわけですから。

否定的な方々が、キンドルやiシリーズの普及を「黒船来襲だ!」というのなら、歴史が証明するように、無謀な戦いを起こすより「提携」や「利用」を模索することの方が長期的には遥かに合理的だと思います。


既存業態の方々の変化のしようはいくらでもあると思います・・・

たとえば印刷会社の場合は、「それでも紙で読みたい」というエンドユーザ向けの「電子書籍印刷配達サービス・・・あなたの好みの紙と表紙、レイアウトで印刷してお届けします!」なんてサービスをやっても良いと思いますし、

とえば出版社に帰属する編集者・・・コンテンツの一部だと僕は思っているのですが・・・は、素人作家のへたくそな文章・・・それは僕もプロなのに下手くそなのですが・・・を有料書籍として絶えうる内容に編集を請け負うサービスなんてありだと思いますし、

書店や流通においては、「わしら年寄りにはアイなんとかなんて無理だし」っていう方々・・・は実はお金はたくさん持っているわけですが・・・を顧客に新しいサービスを展開できる可能性があると思うわけです。

小規模書店の方々・・・は・・・店を賃貸住宅にするとかしかないかもですが・・・

つまり、僕がベンチャーの価値を表現するときにたびたび使う・・・

「変化を恐れリスクをとらないことが、将来の大きなダウンサイドリスクの原因になる」

ということが、変化すべき時に変化を拒む業界の方々に伝えたい最も重要なことです。

電子書籍に限らず、あらゆる「将来の予測」が、特に電気電子機器関連では急速に進むのではないでしょうか。

3Dテレビ・・・あと数年でやっと普及なんて思っていたら、あっという間に商品が出揃ってますよね。
電気自動車・・・言うまでもないですよね。

こういった電気電子化が急速に進む背景には、特に若い世代が「クルマを買わなくなったこと」が一つの大きな要因としてあるのだと思います。

僕のようなクルマ大好き人間でもない限り、クルマを所有し使うことは、とんでもなく馬鹿馬鹿しいことだと思います。
車両本体価格の支払いと、使うことや使わなくてもリセールバリューが年々低下すること、駐車場代、保険代、車検代、ガス代、万が一の場合のダウンサイドリスク・・・それらを支払っても実際に使うのは週に1度程度・・・こんな馬鹿馬鹿しいモノ、他にないですよね。
もちろん田舎の場合はその限りではないにせよ、「単なる足」であれば、500万円のクラウンは必要なく、軽で十分です。
つまり、消費者がクルマに支払っていた(または、支払う予定だった)お金を、もっと実用的な電気電子機器に対して支払うようになったという背景があるのだと思います。

クルマの所有と維持にかかる費用を電子電気機器およびそのコンテンツに向けたら、ぶっちゃけなんでも買えますからね^^

その上、後数年で、「クルマのアッセンブリーは旧来通りのジドウシャガイシャがやるが、部品は全部デンキヤサンが作っている」という現実を観るようになるのだろうと思います。
(ただし、エロいブランド・・・それはヨーロッパのブランドがほとんどなのですが・・・の場合は、この限りではないでしょう。なぜなら元から「単なる足」ではないからです。)


「乗り遅れるな!」なぁ~んてムキになる必要は全くないのだと思います。
感じるまま、興味の向くまま自由に発想し、行動していれば、自然と波に乗ることが出来る・・・僕はそう思います。

僕の場合も、興味本位でiPadをいじり、その感想を誰かに伝えたくてこうして表現しているだけで、実際のビジネスの話がどんどん舞い込む・・・そんなものだと思います。

今、自分の居る位置に留まろう・・・変化しないことを望む・・・そのことの方が遥かに「疲れる」と思うのですけれど^^

2010年7月2日 板倉雄一郎


PS:
当事務所のプレミアクラブ会員のiシリーズ保有率が高いことをどうして知ったかというと、本文でも紹介した当事務所の小冊子シリーズ(SMUKISSDeepKISS)をiPadのi文庫HDで読み込んで本棚に並べたホクホク感を、

1、小冊子版を既にお持ちの方
2、iPad,iPhone,iPodのいずれかをお持ちの方
3、もちろんプレミア会員の方
4、絶対にコピーしたり配布したりしないという約束をいただける方

の条件を満たす方にPDFファイル無償提供すると会員向けにお知らせしたところ、たくさんの会員の方から「くれ!」というリクエストがあったからです^^

今後も、僕がすべての著作権を持つコンテンツはクラブ会員に(配布による経費が発生しない限り)無償で提供しようと思います^^

PS^2:
iPadで有価証券報告書を読むの楽しいですよ^^
ちょっと腕が疲れることがあるけれど寝っころがりながら読めるし、PCの画面より綺麗で目が疲れないし。
うふふ^^

iPadとWindowsPCの使い分けスタイルがだいぶ板についてきました・・・

情報を閲覧するにはiPad。
情報を作るにはWindowsPC。

これですね!


PS^3:
蒸し暑っつい週末になりそうですが、読者の皆様も良い週末を!




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