板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「利益の捻出と創造の違い」

世界各国で企業業績が上向いています。日本の場合も同様です。
ただし、この場合の業績とは、主に「足元の利益」が上向いているということに過ぎません。

中国をはじめとする成長著しい新興国を商品マーケットにする企業や、アップルのように新しく提案した付加価値が市場に高く評価される企業のような、本質的な企業価値の増大を伴う業績の場合もありますが、業績が上向いている企業の多くは、日米欧の失業率の増加、および、設備投資の成長鈍化が示すとおり、人員削減、および設備投資縮小に因る業績向上の場合が目立ちます。

さらに、書き出したらキリが無いほどの先行き不透明要因が、企業をして、新規の採用を減らし、さらに慎重な設備投資計画となる可能性があります。

当たり前ですが、企業は、コスト削減(←すなわち人員削減や新規採用の見送り)や、足元の設備投資や研究開発費の削減といった「投資抑制」を行えば、ある程度売上が減少しても「足元の」利益を増やすことができます。
このようなコスト削減による利益「捻出」は、付加価値増に伴う利益「創造」の場合に比べ容易に実現可能です。
しかし、足元での主に人材に対する投資活動・・・新規採用や人材教育・・・を抑制する縮小均衡的経営は、足元での利益捻出との引き換えに将来の利益創造チャンスを捨てることになりますから、利益の継続的成長性が得られない可能性が高くなります。

したがって、キャッシュフローの継続性を担保にした企業価値は、昨年度や今年度といった比較的短期の業績(および業績見通し)に利益成長が見られたとしても、安易に高く評価すべきではないと思います。

また、個々の企業経営に以上のようなトレンドが見受けられるということは、失業率が今後大幅に増加することはないにしても、失業率の高止まりの可能性は高く、したがって、個々の企業経営の方法自体が利益の継続性を担保できないばかりではなく、企業の商品市場の消費力についても、継続性を担保できない可能性があるといえると思います。

以上から、

「利益も持ち直しているが、同時に投資にも十分な配分を行っている企業」

すなわち捻出された利益ではなく、創造された利益を生み出すであろう企業こそ、世界の消費性向の変化に対して、自らがいち早く変化することができている企業≒成長持続可能な企業、といえるのだと思います。

単独期の利益のスージだけでは、その利益が捻出されたものか、創造されたものか、区別ができませんので注意が必要です。

簡単なスクリーニング方法として、キャッシュフロー計算書における「投資キャッシュフロー」と「営業キャッシュフロー」の過去からの推移を表計算ソフトを使ってグラフ化することをお勧めします。
この方法であれば比較的簡単に、利益が回復している企業の中でも、縮小均衡経営に因るのか、価値創造に因るのかの区別ができるはずです。
後者であれば、投資タイミングを間違わなければ、中長期的なキャピタルゲインを得られる可能性が高いと僕は思います。

2010年6月4日 板倉雄一郎


PS:
そういえば禁煙初めて1ヶ月以上経ちました^^
たまに、「葉巻ならいいか」とか自分をだまし、葉巻を吸うことがありますが、葉巻もタバコに違いありませんから、やっぱりやめようと思います。

禁煙して思うことは、禁煙そのものは、最初の1週間さえ乗り越えられれば、実は簡単なことです。
問題は、禁煙による「副作用」です。

口がさびしい × 食べ物が美味しい = メタボ

結局、意思の問題なのですが、どうにもこの異常な食欲が困ります。
1ヶ月で6kgも太ったっきり元に戻りません。あーもぉー↓
ってことで、次はダイエットに取り組みます。
ちょうど免停なので徒歩やチャリンコで^^

PS^2:
このところ天気いいですよね。
梅雨前の貴重な気候ですから、読者の皆様もこの天気を上手に活用した良い週末を!
(ただし、関東地方は今夜一時雨のようですけれど)
僕は、自宅で近所の方々を誘ってBBQの予定です^^




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