板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「勇み足?それとも・・・」

<そんなんじゃ解決しない>

住宅ローンを利用して住宅を購入し、
住宅価格上昇によって担保価値が増大し、
増大した担保価値によって更なるローンを組み、
得られたキャッシュを使って「労働による収入以上に」浪費し、
更なる住宅価格上昇をうけ、キャピタルゲインを得た上で住宅を売却し、
新しい住宅に転居する。

こんなことをしていたら、突然住宅バブルが崩壊。
住宅融資関連によってめちゃくちゃ稼いで(いるように見えた)金融機関が窮地に陥る。
でも、(米)政府が公的資金をばら撒いて、

「はい。これで元通り大丈夫!」

なぁ~んてことが本当に現実になるのなら、誰も働かないし。

そんなんじゃ何も解決しない・・・そんなことは経済に疎い人だってわかるはず。

つまり(以前にも書きましたが)米経済の回復には、結構な時間が必要になるわけです。

<その昔>

その昔、日本の不動産バブルの真っ只中、「日本はアメリカの土地すべてを2回買える!」なんていわれる時代が「ほんの数年だけ」ありました。
日本の不動産会社、事業会社は、こぞってアメリカの不動産を買収しました。
その後わずか数年で、不動産バブルが崩壊。
やむなく買収したアメリカの不動産を買収価格を大きく下回る価格で売却する羽目になりました。
以上の過程が示すことは、「日本の金融資産が、アメリカへ渡った」ということです。

その後のITバブルでは、アメリカの不動産に代わりアメリカの「IT企業」が投資対象になりましたが、結果は上記不動産バブルと同じ結果になりました。

日本人がせっせと働いて、自動車や家電製品、そして工業プラントなどを作り売り蓄えた資産を、あっという間に失ってしまったわけです。

以上のような「順張りに乗った損失」に比べれば、現在の邦銀による米金融機関の買収(←大株主になるのですから事実上買収です)は、「逆張り」ですから、「比較的」悪くないと判断したのでしょうけれど、普段の投資活動にて「逆張り」を行っている僕から言わせれば、「逆張りってタイミングが難しい」わけです。

「(今後の価値下落を織り込み)十分な割安」での買収なんでしょうか?

その上、買収したところで、日本の金融機関の「不得意」な、投資銀行業務をどう管理し、どう育てていくんでしょうか?

<バフェット氏の場合>

昨年から買収案件の提案を、おそらく相当受けているであろうバフェット氏率いるバークシャーハサウェイは、その提案のほとんどを断っているようです。

一つのケースでは・・・

「ある金融商品を分析しようとしたら、その金融商品には50もの金融商品が組み込まれていて、その50の金融商品それぞれは、さらに50もの金融商品が組み込まれている。
これじゃ、評価のしようがない。」

つまり(数字はテキトーだとは思いますが)、50*50=2500!もの金融商品の中身を評価しなければ、たった一つの金融商品さえ投資判断ができない、というわけです。

現代の金融工学と市場原理による「負の」副産物ですね。

<邦銀の勇み足?>

一方、MUFGは、たった数日間で、モルガンスタンレーの評価を行い、投資判断をした「と言われています」。

確かに、常勤メンバーが20ほどしか居ないバークシャーに対し、MUFGには、その数百倍の「頭数」は居ますけどね(笑)

バフェットクラスが100人ぐらい居るんでしょうかねぇ・・・

 

 

もしかして、政治的圧力?

 

 

それにしても太っ腹ですね。

<資産査定とバリューションの違い>

はっきりもうしあげておきますが、邦銀の方々って、「(B/Sによる単なる)資産査定」はできても、「バリュエーション」はほとんどできないです。
そのための基礎的な知識さえ持ち合わせていません。
(↑ 僕の経験上、断言できちゃいます(笑・・・もちろん例外は常に存在します。))

単なるバランスシートからの資産査定なら、数日間でできますよね(笑)

なるほど、そういうことなのかもですね。
だとしたら、おそらく大失敗投資になるでしょう。

<日本の将来のビジネスモデル>

確かに、日本の将来を考えれば、「製造オンリー」から、「金融サービスへのシフト」は必然ですから、その足がかりにはなるとは思います。
そのための(買収費用以外の)コストって、かなり膨大だと思いますけれど・・・

2008年9月24日 板倉雄一郎

PS:
やっと「秋晴れ!」ですね。
伊豆箱根方面への温泉旅行なんて行きたいですねぇ・・・
でも、お相手はワンコしか居なかったりするんですけれど。





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