板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「金融緩和策」

<too late , too small>

昨日(2010年10月5日)日銀は、政策金利をゼロに誘導する低金利政策およびETFの買入などの量的緩和策を合わせた金融緩和策を発表しました。ついでに為替介入も行った模様です。
この発表によって、日本市場に限らず世界の市場で株式が買われました。

too late , too small.

なぜ今になってなのか、僕にはわかりませんし、なぜ量的緩和策の規模がGDP比1%程度なのかについてもよくわかりません。
良く評価できる点があるとすれば、低金利誘導を「物価が安定するまで(=デフレが解消するまで)」と金融緩和を解除する期間について明確な条件を付けていること。そして(金額は少ないが)ETF買入という異例の措置に踏み切ったことですよね。

今後の市場の関心は、これが今後の日銀による金融緩和策の「スタート」になるのか、それとも、これで精一杯なのかと言ったところではないでしょうか。
これをスタートに、諸外国から「お前らやりすぎじゃねぇ~の!」と、いちゃもんがくるほどドラスティックな金融緩和策を、デフレ解消が明確になるまで続けるとすれば頼もしいのですけれど。

FRBもまた、日銀の(対GDP比)政策規模を超えるドラスティックな金融緩和策を打ち出すことが予想されますし、数ヶ月先まで考慮すればECBについても同様ではないでしょうか。

要するに現在の世界は「自国通貨切り下げ競争」という経済戦争を世界でやっているわけですからね。

この規模では、市場に対して日本政府や日銀の「姿勢」を「一時的に」示す効果があったとしても、日本経済が上向き始めるきっかけになるとは思えません。経済に大きな変化が無いとすれば、これまでの為替やデフレの傾向が中長期で変化するとも思えません。
(もちろん、諸外国の経済状況に大きな変化が見られれば、日本経済にも変化がおこるでしょうが、それは他国依存過ぎると感じます。)

<ボラティリティーの自炊>

昨日、日銀の政策が発表された14時過ぎから株価がそこそこ急速に上昇しました。
しかし、言うまでもなく・・・
「今回の金融緩和策のおかげで日本経済が成長路線に乗り、企業のキャッシュフロー予測が増加するだろうから株を買おう!」
なんて思う人が居るわけではなくて、単に、
「需給バランスから短期的に株価が上昇するだろうから乗っておこう」
というだけの話ですよね。

自らのアナウンスメント効果や、自らが行う投機による価格変動によってボラティリティーを作り出し、作り出したボラティリティーを自らが「食べる」という自炊派の方々にとって、新鮮で且つ足の速い食材が豊富でしょうね。中華料理のように少々忙しい調理方法のような気もしますけれど。

先日、外資系投資銀行の方々が如何に贅沢な暮らしぶりであるかを訴える人に会いました。
彼は、その一つの例を伝えるためにこんなことを言いました・・・

「彼らが毎日どんなもの食べてるか知ってますかぁ!」

僕は答えました・・・

「ボラティリティー。しかも自炊。」

あまりウケませんでしたが、後日この内容をツイッターでつぶやいたらウケました^^

今日はこんなところで。

2010年10月6日 板倉雄一郎


PS:
ベンチャーに勤しんでいた頃、いわゆるマクロ経済の動向など、自社の経営に直接影響を与えるはずも無い。なんて思っていました。
たとえば、「為替が1円変動すると、トヨタの利益は○億円変わる」なんて言われても、「そんなのトヨタ規模の話でしょ」と片付けていました。
しかし、振り返ってみれば、マクロ経済の影響をモロに受けていたことを実感します。
スタートアップであろうとも、ビジネスモデルの構築やスタートアップ時期について、マクロ経済を鑑みる必要性を感じます。




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