原子炉の出力を制御するために、制御棒と呼ばれる中性子を吸収し核分裂反応を抑制する装置があります。
この制御棒を炉心から「徐々に」引き抜くことによって原子炉を臨界させ、出力を上昇させるわけですが、なかなか出力が上がらないからと制御棒を引き抜きすぎると核反応が加速し、炉心が設計温度以上になり、最悪はメルトダウン(炉心融解)という事故に繋がります。
チェルノブイリの事故がまさにこれにあたるわけです。
もちろん、原子炉においては、「どうなるかわからないから少しずつやってみよう」なんていうイイカゲンな方法ではなく、どれほど制御棒を引き抜けば、どれほどの核反応になり、どれほどの出力が得られるか、ということについて、科学的理論をベースに原子炉の設計が行われていますから、機器が正常で、操作する人間がとんでもないミスでもしない限り、理論通りの制御が可能になるわけです。
(以上、素人レベルの話ですので原子炉に関する細かい突っ込みご遠慮くださいね)
この「制御棒」と非常に似ているのが、マクロ経済における金利や財政出動という「政策」です。
金利を必要以上に下げたり、量的緩和を行い続けたり、財政出動をやりすぎたりすれば、経済が加速しすぎ、過度なインフレ(通貨価値の下落)になる可能性が出てくるわけです。
それとは逆に、必要な緩和(←制御棒の引き抜き)を行わず、デフレスパイラルに陥る場合もあるわけです。
原子炉の制御棒の場合も、マクロ経済における金利や財政出動の場合も、制御の結果が「直ちに出るわけではない」という点が重要です。
(もちろん、原子炉のほうが時間軸は短いですけれど)
この両者は非常に似ているのですが、根本的な違いもあります・・・
原子炉は実験ができるが、経済は実験ができない。
(経済は、実験した結果を得られたとしても、日々環境が変化するので、前回の実験と同じ結果が得られるとは限らない)
皆さんご存知の通り、アメリカや日本は、矢継ぎ早に景気対策政策を発表⇒実施しています。
その上、アメリカは、ヨーロッパをはじめとする先進国に対して、「俺達と同じぐらいバラマキをやれ!」とG20などを通じて訴えています。
これに対し、ユーロ圏は、慎重な姿勢です。
ユーロ圏は、「現在の景気対策政策の効果が実体経済に反映されていない段階では追加策をとれない」、と主張しています。
どちらが正しくて、どちらが間違いなのかは、僕にはわかりません。
だってほら、経済は実験ができない以上、現在の世界経済環境下で過去の実験データなど無いわけですから。
ユーロ圏の考え方は、「不十分で遅すぎる」のかもしれませんし、アメリカの考え方は、「メルトダウン」に繋がるのかもしれません。
けれど、「メルトダウン」に比べれば、「不十分で遅すぎる」方が「まだマシ」だと僕は思います。
「景気刺激策を発表したけれど、まだ統計上は好転していないから、もっとやろう!」
と、制御棒を引っこ抜きすぎるのはまずいわけです。
そもそも、何が景気後退の原因であるかどうかも定かではありません。
実は、ファイナンスが付いたとしても、「もったいないから買わない」とか、「またいつどうなるかわからないから所有しないで借りとく」と、消費者心理が変化していることが景気後退の主犯なのかもしれないわけです。
今回の金融ショックに端を発した景気後退を「きっかけに」、世界中の消費者が「本当な必要の無いモノにお金を使っていたかも」と気がついちゃったことが景気後退の原因だとしたら、お金をジャブジャブ注いだところで景気浮揚するどころか、たちの悪いインフレになるだけなのかもしれません。
なんとなく、なのですが、「今なら政府や中央銀行からカネを引き出せるぜ」と、企業や個人の自助努力より、政策依存症の人間が増えているように思えます。
「今のうちに、借りられるだけ借りておこう」と、本来必要の無い資金を調達する向きもあります。
こういう行為は、本当に資金を必要としているところへ資金が回らず、さほど必要としていないところに資金がだぶついて、将来の過度なインフレの「芽」になりえると思うわけです。
結局、「企業が変わらなければ経済も浮揚しない」、というのが僕の結論です。
世界中のあらゆる人は、間違いなく、企業の「利害関係者」ですから。
実験できない経済のことですから、「思う」という表現しかできないのですけれど。
2009年4月3日 板倉雄一郎
PS:
お花見には最適の天候ですね。東京周辺では、まだ満開とはいかないようですけれど。
僕も、この週末は、「お花見(という名目のお遊び)」の予定です。
そうそう、オープンカーで千鳥ヶ淵の渋滞に「わざわざ」はまるのも、お花見の手段として悪くないですよ。
PS^2:
最近、髪の長い女性は皆、耳あたりから先の髪をクリクリさせてますよね。
いや、ちがうなぁ、そういう子に目がいくだけかも(笑)
何のはなし?