板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「顧客『不』満足度調査を商品に生かせ!」

デフレ対策を財政・金融政策にばかり頼っているのではなく、個々の企業が、個人が、「どうしたら売れるか!」について、考え、実行することが不可欠だと、このところ思うようになりました。

「本当に環境のせいなのか?」

「本当にリーマンショックだけが原因なのか?」

違う、マクロ経済は結果に過ぎない。
経済をつかさどるのは、一人ひとりの努力によって成長もすれば減速もする。
だから、自分にできること、自分の立場がすべきことをしよう!

ということで、日本を元気にする前向きエッセイ!にモードチェンジして、暫く続けたいと思います。

(マクロ政策が個々の企業や個人の活動に影響を与えることを知らないわけでも無視しているわけでもありませんが、マクロ政策については、いろんな「専門家と呼ばれる方々」が、様々な提案や、結局あたらないことがほとんど(笑)の予測などをしているので、僕がやらなくてもいっかなと思ったわけです。)

 

顧客満足度・・・聞き飽きたほどの言葉ですが、聞き飽きているからこそ、その本質について、または、見落としている事について、書いてみたいと思います。

現在は、「供給 > 需要」、の状態です。

だからデフレるとマクロ経済学では言うのですが、本当にそうでしょうか?

実は、需要を上回る供給があるのではなく、「需要の無い商品を作っている、または在庫している、または作る設備を持っている」のではないかと感じます。

つまり、全く別のところに潜在的需要はあるのに、その需要に供給側が気づかず、(少なくともその価格では)需要の無い商品ばかりを作っている、在庫している、作る設備を持っている・・・もしかしたらそうなのではないでしょうか。

街道沿いに溢れる中古車在庫・・・日に日に価格が安くなっていくのが見て取れます。

ディスカウントストアにある生活雑貨・・・あんなモノ、家の倉庫や部屋の奥を探せば実は同様のモノがあるんじゃないでしょうか。

バランスシートに載っている資産・・・それってもう資産価値なんか無いんじゃないでしょうか。
(↑ だからPBRなんてまるであてにならない)

ブルーレイディスクに3Dテレビ・・・そんなデジモノは、労働力の安い振興国企業でも作れるんじゃないでしょうか。

リーマンショックを境に、「需要の変化」が起き、それに供給側が追いついていない事が、一つのとても大きな経済停滞の原因ではないかと、僕は思います。

 

つまり、

「こんなんできちゃったので売ってみましょう」とか、

「当社の技術はすんばらしいのです!」とかじゃなくて、

「どんな需要があるのか?」について、もっと考え調査し、商品に生かしていくべき時期なのだと思うのです。

そこで、顧客満足度ではなく、顧客不満足度について考えてみたいと思います・・・

顧客満足度調査・・・それはとても大切なことには違いありません。

けれど、この言葉には、マーケティングの上で不足している部分があります。

それは、

「顧客になった人の満足度は調査できるが、顧客になり得なかった人の『なぜ』に対する答えは無い」

ということです。これ大切なことだと思いませんか?

会員制のネットサービスで、何らかの理由で顧客が脱会を申し出ると、「脱会される理由を教えてください」などと、「既に顧客になったことのある人」の調査は良く見かけますが、サイトを訪問したにもかかわらず(←つまりSEOや広告宣伝は上手に出来ているにもかかわらず)、一度として顧客になったことが無い人の「なぜ」についての調査はできません。

また、ホテルなどで、「支配人宛て」とかいうアンケート調査も良く見かけますが、そもそも宿泊したことの無い見込み客の調査が出来るわけではありません。

でも、それが実現できたら、利益に貢献できるわけです。

全く接点の無い顧客候補の意見など取れるはずもありませんが、顧客に成り損ねた見込み客の意見なら結構取得できる方法があるのではないかと思うわけです。そしてそれは、マーケティング上、商品開発上、非常に重要なファクターだと思うわけです。

というのも、前回のエッセイ、ITAKURA’s EYE 「顧客目線が足りない」で書いた某ホテルのマヌケなオペレーションがヒントになりました・・・

書いたように、某ホテルのブラック会員である僕が、満室の場合、代表電話のオペレーターの段階で、一方的に宿泊予約をシャットアウトされているという顧客不満足度は、実は、顧客である僕自身がクレームというカタチでホテルに文句を言わない限り、ホテル側は認識できないわけです。

ホテルが知っているのは、ちゃんと宿泊して、飲食して、チェックアウトを済ませる僕の姿だけで、代表電話のオペレータの段階でシャットアウトされ、不満だらけの僕の姿は通常ホテル側は知らないわけです。

でも、このケースであれば、僕がホテルに提案したようにブラック会員専用電話を設けさえすれば、どれほどの頻度でブラック会員が顧客不満足を感じているかについての調査ができるようになります

そして、専用電話設置は、先のエッセイでも書いたとおり、いつも居る(=つまり既に固定費となっている)オペレータの脇に、一つ回線を増やして電話機を置き、オペレータに「問題があれば直ちにフロントに回すように」と至極簡単な教育を行うだけで実現可能です。

つまりほとんどコストをかけずに、なかなか表面化しない顧客不満足度をホテルが認識できるようになるわけです。

その↑、専用電話の存在は、たとえ満室で予約が取れなかったとしても、その適切な応対が顧客不満足度を必要以上に大きくしないことにも貢献できるというわけです。

そんなことも実現できないのは馬鹿だと思います。

さらに馬鹿の上塗りがあります・・・

恐らくブラック会員の「誰も」求めていないであろう会員専用チェックフロントが、昨年、ロビーの大きなスペースを占有して作られました。恐らく軽く数百万円の投資だと思われます。

が、この専用フロントにホテルマンがいたためしが無い。僕自身もこのフロントを使ったのはこの1年で多くて2回ぐらいだと思う。それも、顧客である僕が、「せっかく作ったのだから使わなかったらもったいない」とか気を利かせて、ホテルマンを僕が誘導して(笑うしかないでしょ)

これ、需要サイドを見ずに、供給サイドの「思い込み」による愚の骨頂です。

「特別なフロントでチェックイン/アウトすれば、会員も喜ぶだろう」とかいうマヌケな発想に基づくのでしょう。

継続的利用者の僕からすれば、そもそも面倒なチェックイン/アウトなどパスできるシステムの方が遥かに価値があります。

(具体的提案は、ITAKURA’s EYE 「モノよりサービス」に書きました。)

以上は、ホテルというサービス業に関する顧客不満足度調査の提案ですが、このところのエッセイで書いているように、モノづくり業であったとしても、その本質は、モノを媒介にしたサービス業であることを考えれば、モノづくりについても同様の提案が可能です。

ちょっとした工夫で気づくことのできる顧客不満足度を放置することにる潜在需要の取りそこねについて考えてみる必要があるのではないでしょうか。

 

僕は、顧客としてとてもうるさい方です。
だから僕の顧客不満足度は、提供側に伝えることが出来ます。
しかし僕のような顧客は、少数派です。
多くは、「まいっか、次から使わなければ」、と離れていってしまうわけです。
顧客不満足度調査を積極的に行わなければ、こういった「見えない機会損失」を常に抱えることになるだけです。

いつも、「良かれと思って(=クレームすることが提供側にもプラスになると思って)」、理論立ててクレームするのですが、いくら伝えても、その重要性に気がつかない供給側では意味が無いですよね。

だから、供給側は、不景気であるからこそ、顧客不満足度についてその価値を認識し、工夫すべきだと思うわけです。

「この機能すげえだろ!」なんてやっているうちは、新興国企業と全く同じ土俵です。

勝ち目はありません。

 

2010年3月18日 板倉雄一郎 (本日2本目のエッセイ)

 

PS:

自動車不況の中で、Audiブランドは比較的好調です。
彼らにそのわけをヒアリングすると、「徹底的な接客教育」にあるそうです。
Audiはクルマとしての機能も優れています。
ボディー剛性は車種を問わず高いですし、したがってサスペンションのフリクションを感じることもありません。素晴らしい乗り心地と品質です。
でも、そんなモノとしての機能だけじゃダメなんだと、彼らの業績は示しているのだと思います。
(僕は、Audiのルックスが好きじゃないので、顧客にはなっていませんけれど)

PS^2:

この2年ほど、「次はなにしよっかな」なんて悶々としながら遊びふけっていましたが、ようやくやりたいことがはっきりしてきました。

それは、「日本版ネット版コンシューマプロダクツ」です。

(米)コンシューマレポートについては、過去のエッセイでも何度か触れていますが・・・

1、企業広告を一切とらず、読者からの購読料だけで運営されるので、評価対象の商品を提供する企業からの圧力を全く受けない。

(たとえば、自動車の安全性のテストのためにオフセットクラッシュ実験を行う際にも、自動車メーカーからの自動車の提供など受けず、自らのコストでクルマをぶっこわしたりするほど徹底しています。)

2、だから常に消費者の立場に立った商品評価が可能になる=消費者の信頼を得る。

ということですが、僕がやる意味は・・・

3、でもってこういうの僕は大好きだ(笑)

僕の小うるさい性格を、「もっと大人にならなきゃな」などと封じ込めるのではなく、むしろ大いに利用できる。

4、そして、商品だけではなく、商品を提供する企業の財務や経営についての評価も(情報さえあれば)加えることが出来るから、当該企業の継続性やアフターサービスなんかにもある程度言及できる。

5、上記のホテルのケースのように、批判するだけではなく、合理的な提案もすることが出来る。

6、それが上場企業であれば、投資対象としての評価も同時に出来る。

7、ブランドを確立できれば、消費者のデータを企業に対して売ることも出来る。
(↑ 個人情報を売るという意味ではありません。)

8、具体的な評価は一つの商品に限られるが、その評価を一般化した表現が出来る。

ということで、差別化と優位性を盛り込んだビジネスモデルは以上ですが、具体的な方法について現在検討中です。

この事業、商品を提供する企業の敵なのかというと決してそんなことはありません。商品を評価される側の企業においては顧客不満足度を調査できるわけですから、インチキ企業の敵ではあるけれど、真っ当企業の味方になりえるわけです。

実際に事業化するかどうかは、まだわかりません。

けれど、「やりたいこと」があるって事は、それだけでハッピーなことだと実感しています。

最も重要なのは、運営費と利益を捻出するために、それこそ顧客満足を得る方法です。何しろ視聴者というか読者の方々が、「お金を払ってでも知りたい」という価値ある情報を提供しなければならないですから。

むずかしい・・・





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