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ITAKURA’s EYE 「ブラックスワンはいつも居る、など」

今回のエッセイは、僕がツイートした内容を基に、少々説明を加えた内容をいくつか。

【ブラックスワン対策】

ツイート:
「ブラックスワン」(NNT著)の重要な主張は「事象の起こる確率より起こった時の影響の大きさが重要だ」という事だと僕は理解している。
起こったときに影響が極めて大きければ、ある事象が起こる確率がどれほど低くても無視できないということ。
正規分布では解決できないわけですね。


「ブラックスワン」(ナシーム・ニコラス・タレブ著)の重要な主張は、

「事象の起こる確率より起こった時の影響の大きさが重要だ」

という事だと僕は理解しています。

ある事象が起こったときに、その影響が極めて大きければ、その事象が起こる確率がどれほど低くても無視できないということ。

ある事象の起こりうる確率は一般論として「正規分布(やファットテール)」によって考えられます。
これだけでは不十分である事をブラックスワンは訴えているわけです。

それぞれの事象の確率と分離した「起こったときの影響」をある程度数値化し、上記の確率分布との「積」をとり、その結果がフラットになる経済モデルが必要ではないかと思います。

現状の様々なリスク管理を「確率分布と影響の大きさの積」で取ると、確率が低い部分・・・つまり正規分布グラフの左右の端の方が大きくなってしまうと思うのです。
つまり発生確率の低い事象が無視されるめ、それが起こったときには大きな影響が出てしまうということです。

それが今回の震災で明らかになったのではないでしょうか。

一個人や一企業としては「ダウンサイド限定&アップサイド無限大のモデル」を構築する事の価値が増大していると感じます。
(これも「ブラックスワン」からの受け売りですw)

以上、グラフ抜きなので全然伝わらないかもですが。


【西に逃げろ!?】

ツイート:
今は「西に逃げろ」という感じだけれど、いつ起こってもおかしくないと言われ続けてきた「東南海地震」は忘れられているのかな。
それどころか「別なプレートだから大丈夫」という識者も居る。彼らの意見を聞くと、今回の地震で東南海地震の確率が減ったようだ。


識者の意見を聞いていると、

「東南海地震は今回の太平洋プレート&北米プレートの摩擦とは無関係だから連鎖の可能性は低い」と、例によって「大丈夫論」が聞かれます。
(勿論、連鎖を指摘する識者も居ます。)

僕はこの意見が不思議で不思議でたまりません。
これまで何十年もの間「東南海地震はいつきてもおかしくない!」と言われてきたのに、今回の地震が起きた結果、連鎖はしないと。

まるで、今回の地震が起きた事によって、東南海地震の発生確率が下がったように聞こえなくもない。

「素人感覚」で考えれば、こちらのプレートがずっこけて、隣に影響が無いなんて、俄には信じられないのですけれど。

あくまで比喩ですが、同じ様なビジネスプランを持っているAさんとBさんが居て、Aさんは過去に事業を失敗させた経験があり、Bさんは奇麗な経歴を持っているとすれば、僕はAさんに投資したいと考えます。
経験値から少なくとも同じ失敗はしないだろうと予測するからです。
その意味で、しばらくの間、事業も暮らしもやりづらいけれど東日本に居ます^^


【ルックスルーが足りない】

ここはツイートのやり取りをそのまま抜き出し掲載します・・・

僕のツイート:
損害の負担:東電株主の有限責任で賄えない分(ほとんどが賄えるはず無い)は、政府が負担しようが、東電を国有化しようが、電力料金に転化しようが、東電役員をシケーにしようが、どんな制度作ろうが、我々国民の負担。これはどうにもならない。

僕のツイートとは無関係に@michitoshi(友人で弁護士関西在住)さんから公式リツイートされた、ある方のツイート:
東電の賠償額の不足分を国が補填するとか国有化とか言われてるけれど,それって東電の恩恵を受けてきた人の尻ぬぐいを国民全体でするってことで変だよねぇ。東電の電気料金値上げって形で東電管内のこれまでの受益者が内部化して負担するのが筋だと思われるけど。

これをリツイートした@michitoshiさんに対する僕のツイート:
リツイートしたミッチーへ。ルックスルーが足りない意見に聞こえます。
どこまでを便益グループと考えるかに依存するけど、電力会社の「たまたま地域」で便益を分けるのは強引かとおもうけどな。

@michitoshiの@ツイート:
そうですね。誤解を招く公式RTでした。こういう意見の人もいるんだけど・・・というレベルでした。個人的には、電気料金値上げには賛成しません。ですが、折角の機会ですので、議論しましょう。
この問題(国有化等の問題)は、今すぐ政治家が言及すべき問題とは思いませんが、近い将来、政治問題化することは不可避であろうと思います。本質的には、「原子力発電のリスクとコストを社会的にどう織り込むか」という問題だと思います。

@板倉の@ツイート:
全くその通り。つまりブラックスワンが居なければ原発はコスト優位だけど、ブラックスワンが居る事を前提にすれば、決してコスト優位性が高いとは言えないのだと思う。その意味で損害補償とは分けて、今後の電力料金は上がらざるを得ないと感じます。

@michitoshiの@ツイート:
そうですね。その際に、「電気料金」としてなのか、「原子力安全保障対策税」(仮)のような税金(+国や自治体が安全保障が十分でないと判断した場合に対応策を講じる制度(既存制度の十分性))を設けて対応するのか、というような議論になるかもしれません。

@板倉の@ツイート:
いえてるね。そもそも一民間企業が原発なる得体の知れない(←原子力の本当の効能は実は学者にも解っていない)事業を行う事がどうなのかもありますね。TMI事故でも生物への影響がまだ完全には解ってないからね。

@板倉のツイート:
そういえば昨年10月のオープンセミナー後の懇親会でミッチーと「日本の地政学的リスク」について議論したとき、僕が「じゃあ地震は。この国は地震の巣だよ」と言ったのを思い出したw

@michitoshiの@ツイート:
日本人は、常に地震(及びそれに伴う派生的事象)があることを前提に(そのリスクとコストを考慮して)、いろいろな制度設計や選択をしなければなりませんね。実家(大阪南堀江)近くの川沿いに「天災は忘れたころにやってくる」という石碑がありました。

その後@michitoshiは「そうだ寿司食いに行こう」とつぶやいた後いなくなってしまった(笑)
僕もつられてランチは寿司だ。


2011年3月31日 板倉雄一郎




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