板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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パートナーエッセイ 第10回「デイトレはリスクが少ない!?」

★板倉の休暇中、当事務所のパートナーによるエッセイをお送りしております★

との出だしの下、板倉以外のパートナーによるエッセーリレーの予定でしたが、
またもや今回も、板倉が書きます。

タイトルを見て、「えっ!?」って驚いた読者の方もいらっしゃると思います。
「なんで板倉が、デイトレはリスクが少ない、なんていうの?」って。

もちろん、僕がそう思っているわけではなく、
デイトレの優位性を強調した、とある学者による「ある書籍」に、
上記のような主張があったのです。
詳しくすべてを読んだわけではないので、
書籍の具体的名称などは、差し控えます。

この本によると・・・
「デイトレは、夜間にポジションを持たないので、その分リスクが少ない」
といった主張があるようです。

この本の読者は、「なるほどぉ~」と納得してしまいそうです(笑)

そもそも、
「投資していない時間」に、投資に関するリスクが「あるわけない」のです。
(ただし、インフレリスクや、運用機会損失はあります。)
同時に「リターンも無い」わけです。
(ただし、インフレによるロスはあります。)
よって、
「投資していない時間=リスクにさらされていない時間がある」
ということと、
「だからデイトレはリスクが少ない」
という関連付けには、無理があります。
というより、
「短時間でリターンを得よう」とする時間(=相場が開いている時間)には、
むしろ、
「極めて高いリスクにさらされている」ということでもあります。

「F1ドライバーは、
 レースをしていない間、モナコで優雅に過ごしているからリスクが少ない」
といわれて、「なるほどぉー」って思う人、居ませんよね(笑)

他にも、「論理的におかしい主張」が多々見られました。
おそらく、この著者が、本気でそう思っているというより、
「何らかのポジショントーク」だと感じました。
デイトレが流行ると儲かる「誰か」との何らかの関係があるのでしょう。

デイトレに限らず、「短期の値幅取り」は、明らかに「ゼロサム」です。
誰かの儲けは、他の誰かの損失の上に成り立っています。
それが倫理的に良いとか悪いとかは、それぞれの方の価値観に依存します。
しかし明らかなことは、
「短期間に大きなゲインを求めるということは、同時にリスクも大きい」
という「当たり前の事」を、忘れてはなりません。

株式投資は、その手法がデイトレであれ、バリュー投資であれ、
間違いなく「リスクの高い投資」です。
しかし、
投資対象の「価値」を把握し、
価値と価格の乖離および時間経過による価値創造に着目することによって、
(↑つまりその企業についてよく知ることによって)
リスクに対するリターンを大きくすることが出来ます。

このとき大切なことは、「期限フリーの資金」による投資を行うことです。
「期限フリーの資金」であれば、
価値に対して安い価格が何らかのショックで得られるチャンスを、
じっと待つことが出来ますし、
また、
価値に対して安い価格のときに利益確定をする必要が無くなります。
「期限フリーの資金での投資によって、時間を味方につける」
これこそ、個人投資家の優位性なのです。

しつこく当たり前の事を強調しておきますが、
「リスク < リターン」の関係を作るのは、投資家自身の知識です。
楽チン、カンタン、すぐに儲かる・・・
そんなことを「自分だけには出来る」と思い込むことは自由ですが、
本当に、そんなことがあるのか・・・冷静に考えていただきたいと、
その方自身の「財布」のために、申し上げておきます。

2006年7月28日 板倉雄一郎

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