板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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パートナーエッセイ 第8回「理想主義 現実主義」

★板倉の休暇中、当事務所のパートナーによるエッセイをお送りしております★

との注釈の下、「板倉以外の」当事務所パートナーによるエッセーのはず、
でしたが、少々事情があり、急遽、今日は板倉が書きます。

僕は、「理想主義者」だと言われる場合が多いです。

たとえば、国家の外交政策における二つのパラダイム・・・
「世界経済がグローバルにリンクすれば、相互に経済的な依存が強くなり、
 結果として戦争はおきにくくなる」
といった考えの「理想主義的考え」を持つ者を、ウィルソニアンと形容し、
一方で、
「いやいやとんでもない、世界は覇権を争っているのが現実で、
 経済のグローバル化も、その一つの手段に過ぎない。
 すべては、バランスオブパワーだ。」
といった考えの「現実主義的考え」を持つものを、リアリストと形容します。
(↑ 細かい定義については割愛しています。)

僕は、「そのどちらにもあたらない」と思います。

もし、「経済極上主義」が、すべての国の共通の考えなら、
ウィルソニアンの考え方も合理性があると思います。
この点において、僕はウィルソニアンに見えます。
しかし、そもそも、「経済なんて二の次だ」と考える国や人はたくさん居る。
という現実があり、その現実を受け入れる僕は、リアリストとも言えます。

また、普段このサイトのエッセーなどで、「経済の話」ばかりしている関係で、
「経済極上主義者」と思われる場合もありますが、これもまた、全然違います。

たとえば、この日本においても、
経済「だけ」に集中した戦後数十年のおかげで、
日本人の「心」は、「拝金主義」によって破壊されつつある、とさえ思っています。
「経済より大切なことがある」と、僕は思っています。

経済が、最も重要なのではなく、
人々が豊かな暮らしをするための「必要最低限の手段」として、
経済システムそのものが必要不可欠であり、
経済システムそのものが、人々の豊かな暮らしのために機能するには、
経済システムに参加する人々の経済システムに対する理解が不可欠だ。
との主張を持っているに過ぎません。

多くの人々が、経済システムについての理解を深めれば、
経済に理解の深い者による、経済に理解の浅い者からの「搾取」は、
「今よりは」起こりにくくなる・・・という「理想」を持ち、活動をしています。

しかし一方で、そうは言っても、
「なるほど、じゃあ、もっと学ぼう・・・僕も、おばかさんかもしれない」
と、「思える人」に対してでなければ、
僕の活動は、「馬の耳に念仏」となる「現実」も承知しています。

よって、僕の活動がどれほど広範囲に行われたとしても、
完全な「最適配分社会」は実現しないでしょう。
しかし、現在の義務教育の中で、
「豊かに暮らすための最低限の経済の知識」
を、伝えていない状態を鑑みれば、
「いくら教えたって無駄だよ」という結論は、
「現実主義」ではなく、「単なる諦め」だと思うのです。

僕は、理想主義者でもなく、現実主義者でもなく、
「私たちの未来に現実的な理想を持った合理主義者」
だと思っています。
(「合理主義」という言葉は、多くの場合、「ご都合主義」と誤解されています。
 合理主義とは、その名のごとく、「理に適った主義」です。
 DeepKISS最終回「バランス」で書いたとおり、
 「自分のグループにおける合理(=リーズナブル)主義」であり、
 「どこまでを自分のグループとして捉えるか」によって、
 その言動の価値は変化します。
 つまり、「何主義か」という議論は、とどのつまるところ、
 「どこまでを自分のグループとして捉えるか」に依存する、というわけです。)

現在のこの国は、理想主義者の塊でもなければ、現実主義者の塊でもなく、
「当事者意識の薄れた現実逃避者&利己主義者の塊」だと思います。
「私」の主張が強く、
「私」の実現のための唯一の手段が「金」だと思う人が多すぎます。
いつも書いていることですが、「私」は、常に社会の一部であり、
社会を抜きにして「私だけ」が、豊かさを得ることなど、
「現実的に」不可能なことなのです。

経済を深く理解することにより、
「私」と「社会」の関係を理解することが出来ます。
企業や経済は、私たちが豊かに暮らすための手段に過ぎません。
しかし、「手段」への理解は、理想に近づくために、とても重要です。
企業や経済への理解によって、
「社会とは何か」についての一定の理解を得ることができるはずです。

早い話が、私たちが普段「日本語」や、「算数」が出来るように、
「企業や経済」についても、さっさと習得して、
もっと大切なことを考えられる世の中にしたい、ってことです。

マスメディアが、
単なる「グリーンメーラー」によって、都合よく利用され、
多くの人の経済価値が搾取されているような稚拙な状態から、
さっさと抜け出しましょうよ。

2006年7月24日 板倉雄一郎

PS:
26日(水曜日)からは、パートナーによるエッセーリレーを行います。





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