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パートナーエッセイ 第14回「データにダマされない」

★板倉の休暇中、当事務所のパートナーによるエッセイをお送りしております★

『よくもまぁ、こんな記事を書けるな~・・・』
新聞を読みながらそう思われたことがある方は多いと思います。と、同時に、

『その分野に詳しくない人が読んだら信じちゃうだろうな~、マズイよな~』
とも思ったことがある方も多いのではないかと思います。

皆さん、こんにちは!
板倉雄一郎事務所パートナーの下田と申します。

本日のエッセーは私の担当です。
データにダマされないための方法をお伝えします。
どうぞお付き合い下さい。

まず、下記の最近の総裁選に関する記事タイトルをご覧下さい。

―――――――――――――――――――――――――――――――
<自民総裁選>福田氏不出馬に失望3割 毎日ネット調査
―――――――――――――――――――――――――――――――

タイトルだけ見れば、
『福田氏の総裁選不出馬に失望している人は意外に多いものだなぁ』
という印象です。
ところが本文を読んでみると

―――――――――――――――――――――――――――――――
福田氏不出馬は(1)失望した(2)理解できる--の二者択一で聞いた。
この結果、失望が29%、理解が71%だった。
―――――――――――――――――――――――――――――――

えっ??むしろ「理解できる」とする人の方がはるかに多いんじゃない?!
と思われた方がほとんどだと思います。

残念ながら、この記事の例のように書き手の意図によって、
事実が見えにくくなるということは、日常茶飯事で起きています。

こういった分かりやすい例なら多くの人が気付きますが、
似たような(カンタンな)手口で、多くの人が印象操作され、
世論が作られるとなると・・・、怖くなりますね。

では、こういった記事やデータにダマされないようにするには
どうしたら良いかということですが、
私個人は、各種アンケート結果とそれを引用している記事は、
基本「ほとんど全て」信用していません(笑)。
例え発表主体がどんな有名な信用できる機関によるものでも、です。

なぜ、そういったスタンスで記事を読むのかというと、
下記のことを知っているからです。

1.そもそも数字は多くの人の思考を止めて、納得させ、
記事を信用させることを意図して使われることが多いから。

2.アンケート調査というのは、どんなに調査主体が努力しても、
記事になるまでの過程で、なんらかのバイアス(偏向)や
意識的・無意識的なミスが潜んでしまうから。

1.はそのまんまですが、2.について、
実際に新聞や雑誌の記事になるまでに
どのような工程を経ているかを
少々長くなりますが、下記に大まかに分解します。
(状況によって順番や内容は多少前後します)。

① すでに起こっている事象がある
例えば、所得格差が広がっているetc

② データ取得目的の策定
例えば、所得格差が広がっていることを調べるため、
あるいは、実際はそれほど広がっていないことを調べるため。
ここで調査主体のバイアスがかかることがあります。

③ サンプル抽出
所得格差を調べるために、どこの誰をどのように、
どのくらいの人数調べる必要があるか。

④ データ取得方法の決定
質問内容を決め、取得方法、電話か、インターネットか、
街頭インタビューか、また別の方法か
ここでも、質問の表現一つで答えが変わってきます。
意図が入りやすいところです。
また調査方法によっても結果は変わってしまいます。

⑤ データ取得
実際に調査を行いデータを取得する。

⑥ データ解析
統計的手法を用いて解析する
ここは間違わないことが多いです。
発表主体のメンツに関わる問題ですので。

⑦ 統計量算出
統計処理のために計算で生成される数字全般のこと。
例えば、平均値、偏差値、(=バラツキを表す標準偏差を加工したもの)、
のような聞いたことがあるようなものもあれば、
t値、F値など、統計を生業にしている人しか使わないものまで
たくさんあります

⑧ .記事
数字をどのように解釈し記事にするか、など。
例えば、所得格差は拡大しているか?またそれを是とするか非とするか?
もちろん解釈は観測者によって異なって良いものですが、
記事にはポジショントークが多いのです。
(参考SMU182号「ポジショントーク」)

上記の過程の中で、どれか一つにでも、怪しい点があれば、
最終成果物である記事は怪しいと言えます。
上記の過程全てにおいてカンペキな記事など存在しないでしょう。
その点で私は「ほとんど全て」の記事を信用していません。

このように、記事を疑いのスタンスで読むことにより、
騙されたり、特定のメディアや個人のバイアスの効いた記事を
鵜呑みにすることはなくなるでしょう。
少なくとも格段に減らすことができます。

しかし、記事の中にはやはり有用なものもたくさんあります。
有用な記事をどうやって有用であると判断するのでしょうか。

それは・・・、
「真っ当な知識、及び、そこから得られる経験を持つこと」に尽きる、
と思います。なんとも色気の無い答えですね(笑)。

逆に、記事やデータの裏に潜む意味を読み解く「真っ当な知識」があれば
有用なものを見分けることができます。
本当に起きている事象を読み取ることができます。

ファイナンスで例を挙げますと、ライブドアの件では、
有価証券報告書を読み解く真っ当な知識があれば、

多くの新聞や雑誌やインターネットで
ライブドア(ホリエモン)の活躍を持ち上げるような記事が
どれだけたくさんあったとしても、それらに影響されずに、
きちんと批判的な記事を読むことができたでしょうし、
結果的に、「怪しいので投資をしない」
という判断・選択ができたということです。

情報があふれかえる中、有害な情報からご自身及び財産を守るためにも
『真っ当な知識』は重要ですよね。
これはファイナンスでも、投資でも、統計でも、それ以外の分野でも
共通しているのではないでしょうか。

今の日本に本当に必要な知識である
『ファイナンスの基礎』、『有価証券報告書の読み解き方』について、
少しでも興味をお持ちの方は、
8月19日に行われますオープンセミナーにいらしてくださいね!
『真っ当な知識』をたっぷり得られますから。

2006年8月3日 下田浩司
(ご意見・ご感想はこちらまで)

PS:
「夏休み&セミナー募集開始」も是非ご覧ください。





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